37:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:40:59.12 ID:rVNZ4GiQo
〜
「……最後は、学校に行ったんです。七森中に……そこでチョコを渡しました」
「…………」
撫子さんは啜ったコーヒーのカップをかちゃりと置き、窓の外を見ながら私の話に耳を傾けていた。
喫茶店に入って席につき、注文したものが届くなり「とりあえずバレンタインデーに何があったかを聞かせて」とだけ言われた私は、忘れたくても忘れられないあの一日を振り返って……その日の行程を最初からたどたどしく説明した。
「チョコをしまった櫻子に、その日一日のお礼を言いました。生まれて初めてのデートがこんなにうまく行ったのは、櫻子の方もいっぱい協力してくれたからだと思うって……その話をし始めた時からです。櫻子の目が変わったのは」
「…………」
「さっきまで楽しそうにしてたのに、急に泣き出して……私もどうしたのかと思って近づいてあげたら、どんどん激しく泣いちゃって」
「私もつられて泣いてしまいました。面と向かって素直になれたことなんて今までほとんどなくて、感極まってきちゃって……それで泣いてしまったんです。櫻子も私と同じ涙を流しているんだと思って……抱きしめてあげました」
「でも……なぜか突き飛ばされてしまいました」
「私は混乱しすぎて、全然何が起こったのかわからなくて……でも櫻子はそのまま泣きながら、一人で走って帰ってしまったんです。私は追いかけることもできずに……ただただその後もそこでずっと、突き飛ばされたままの姿勢で動けなくて……」
光景を思い出しながら話していると、勝手にそのときの気持ちが思い返されてしまう。撫子さんは泣き出してしまった私にテーブルの紙ナプキンではなく自分の持っていたハンカチを渡すと、優しい声で質問をした。
「櫻子の様子が変わってから……櫻子は何か言ってなかった?」
「言ってました。でも私は……全然意味がわからなくて……」
「……何て言ってたか、覚えてる?」
「しきりに『ごめん』と……あと、もう会うのはやめようと……」
「……そっか」
あの時櫻子が言った言葉の内容を……私は今でも理解できていなかった。いくら考えてもわからないということはつまり、私の知らない何かが隠されているのだとは思うが……それが何かを想像することさえ心が痛くて仕方なくて、
櫻子のことを考えと、悲しくなってしまって……
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