38:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:41:26.06 ID:rVNZ4GiQo
「ごめん、ありがとね。こんな話させちゃって」
「いえ……」
「でも何となく事情はわかった。後で櫻子にも聞くけど……ひま子に会えて、ひま子から聞けてよかったよ」
「……えっ?」
その一言にはっとなった。
忘れていた。この人は櫻子のお姉さんだ。
ということは……私が知らないその何か、櫻子が私に隠しているであろう何かを知っているかもしれない人なのだ。
「撫子さんは……何か知ってますの!? 櫻子のこと……っ」
「…………」
「お願いです教えてください、あの子の言った言葉の意味は何だったんですの……? 櫻子が隠しているものは一体何なんですの……!?」
急に声を荒げる私に一瞥おき、姿勢を向き合いなおした撫子さんは……私の目をまっすぐ見て、よく通る声で言った。
「それは……私は言えない。櫻子が直接ひま子に言わなきゃダメなことだから」
「っ……」
「……事情を知らないわけじゃないよ。知ってる上で言ってるの……こんなところで、急に現れた私なんかが言っちゃいけないことだと思う」
……この人は、私と櫻子が出会ってからの全てを見てきている人だ。
十年以上の歳月……人生のほとんどを櫻子と一緒にいて、傍にはずっとこの人がいた。私たちの関係も何もかもをすべて知っている、私たちみんなのお姉さんだった。
だからわかっているはずだ。今私と櫻子の間に起きている事態の深刻さを。ここまでずっと一緒に歩いてきて、それぞれが違うルートを辿りはじめた今……もうこの先ずっと交わることがなくなるかもしれないということを。
それでも何も教えてくれない撫子さんを……「意地悪」だとは思えなかった。だってこの人は、私と櫻子のことを一番よくわかっている人だから。
この人は全て知っていて、わからないことなんて何もなくて、その上で「教えない」と言っているのだろうから。
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