5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:14:20.03 ID:rVNZ4GiQo
「あっ……」
ポケットの中の振動に気づいて、携帯電話を取り出す。今手に持っている小説を貸してくれた子からのメールだった。他愛のない内容でもこまめに連絡をくれる子で、家の方角は私と反対だがとても仲良くしてくれる。
返信を終え、ふとメールの受信ボックスを探ってみようと思った。櫻子から最後に来たメールはいつのものだったかが気になったのだ。
だいぶスクロールを重ねた所に、大室櫻子からの返信メールを見つけた。「バイトがあるからいけないんだ、ごめんね。」――去年の秋、連休を使って櫻子と久しぶりに会おうと思って誘ったときのメールだった。
絵文字も何もない文面のそのメールは、ひどく悲しげな顔の櫻子を何故か連想させた。高校に入ってからというもの、あの子の方からメールが来たことはない。私がメールを送っても、味気ない短文の文章だけがいつも返信として返ってきてしまう。
なにか櫻子に送ってみようか……そう思って新規のメールを作ろうとし、しかし何も思い浮かぶことはなかった。大きな連絡事でもあればメールのひとつも送るけど、他愛のない文をやりとりするなんてことは高校に入ってからほとんどなく、そうして一年経ってしまった今急にそんなやりとりをするなんてことは不自然極まりないことになっていた。
携帯をポケットにしまい、小説を再度開こうとすると、自宅の最寄駅に到着する旨のアナウンスが流れた。
ひとたび櫻子のことを考え出すと、いつもあっという間に電車が到着してしまう。
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