7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:16:24.95 ID:rVNZ4GiQo
――こんな気まずそうな空気で話をしたいのではない。私はあの頃の櫻子と、昔のようなやりとりがしたいのだ。元気に満ち溢れた櫻子を、隣で見守るような……
今日偶然出会えたことを無下にしてはいけない。これはチャンスだ。
意を決して、私は一歩踏み出してみた。
「じゃあほら、こんな家の前で立ち話もなんですし、どっちかの家でゆっくり……」
「ごめん、向日葵」
遮るように、私の言葉を切るように、櫻子は少し声量を上げて言った。言葉尻を切られた私は話を続けることができなくなり、櫻子の顔を伺うことしかできなくなった。
「私今日、忙しくてさ」
申し訳なさそうな笑顔を向けて、私の横を通り過ぎて大室家へ入っていく櫻子。
その言葉からは、どこか「嘘をついている」ような気がした。
本当に忙しいのか? 私には、この場からただ逃げたがっているだけのように見える。
「じゃあ、また」
鍵を開け、ドアを開け、ドアは閉まり、櫻子は私の視界から消えた。
「また」なんて言われたけど、もうしばらくは会えなくなるような予感がした。
櫻子に避けられている気がする。なぜ?
普通でいたいのに、気まずくなってしまう。なぜ?
「櫻子……」
そのとき、冷たい風がぴゅうと吹いた。冷え切った風に楓がふるふると凍える。「ごめんなさいね、早く中に入りましょうか」と背中を押し、楓と一緒に自宅の門をくぐった。
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