21: ◆Freege5emM[saga]
2015/09/13(日) 21:58:47.29 ID:heJa7yVRo
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……私が、小学校に入って間もないころ、
家族に連れられて春の戸隠を訪れたことがあります。
高天原から落ちてきた天岩戸とされる戸隠連峰。
信州のはぁとさんであれば、名前はご存知ですよね。
戸隠の参道。今の私であれば、色々と想像をめぐらせつつ歩けるところです。
レッスンのおかげで、だいぶ体力もついてきましたし。
しかし当時の私にとっては、車窓から見る参道が鬱蒼とした木々に覆われて薄暗く、
枝の間や幹の陰から何かが出てくるんじゃないかと、どこかそわそわとして気の落ち着かない場所でした。
……これが、秋に紅葉で真っ赤に染まっていた季節のことだったなら、
また違った思い出になったかもしれません。
両親は、神職さんと何やら話し込んでいました。
私は、上から押し包んでくるような木々の圧力から逃れようと、
近くにあった入母屋造の古めかしい社殿まで歩きました。
社殿の梁から下げられた白い垂れ幕の合間から、社殿のなかを見ることができました。
そこは、上から吊り下げられた白い灯籠がいくつも規則的に並んでいて、
太陽光や蛍光灯の光とは違う柔らかさが漂っていました。
歴史を重ねた神社というものは、当時の私にとって、目に入ってくるものがどれも珍しく思われました。
未知の世界に心惹かれて私の足が引き寄せられ、いつの間にか数段の階(きざはし)を登り、
気づけば高床の上に組まれた社殿のなかへ足を踏み入れてしまいました。
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