過去ログ - 真姫「かたわれアイスキャンディー」
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1:※にこまき[sage saga]
2015/09/09(水) 16:30:38.17 ID:SLBdxrKwo
 
  So we must be careful about what we pretend to be. 
  
 (ゆえに、人は自らが演じるものについては慎重に考えざるをえない。) 
  
  
  ――Kurt Vonnegut Jr., “Mother Night” 
 
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:31:16.13 ID:SLBdxrKw0
  
  
   ◆  ◆  ◆ 
  
  チューペットアイスの食べ方はにこちゃんの部屋で教えてもらった。 
3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:31:42.98 ID:SLBdxrKw0
  
  
  ぱきん、ぱきん。 
  あの音と、 
  付け根からくゆらせた細くて冷たい煙。 
4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:32:09.32 ID:SLBdxrKw0
  
  
  それは質の悪いフルーツジュースをさらに薄めたような味で、 
  前ににこちゃんが家の近くのビッグエーで 
  線香やライターと一緒に買ってきた十本入りの最後の一本だった。 
5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:32:35.86 ID:SLBdxrKw0
  
  
  食べ方を覚えた頃、あの子の肌の白さが好きだと気付いた。 
  夜のように深い髪の色と違って、 
  まっさらな肌はひたすらまばゆかった。 
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:33:02.38 ID:SLBdxrKw0
  
  
  音の速度で空を駆けながら、捨てた夢まで輝き出す頃、 
  それなのに、 
  どこかで積んだ小石の崩れる音が聞こえた。 
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:33:28.72 ID:SLBdxrKw0
  
  
  コップに残した方のアイスの傷口から汁が涎のように滴りはじめている。 
  
  私もプラスチックに噛み跡をつけて氷の汁をしぼり出しながら、 
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:33:55.07 ID:SLBdxrKw0
  
  
  髪の毛を抜く癖は中学に入るまでに忘れた。そのはずだった。 
  ピアノの発表会の前夜。 
  日能研の統一テストの帰り道。 
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:34:21.39 ID:SLBdxrKw0
  
  
 「ひどい頭になってるわよ、あんた」 
  玄関先で出迎えるなり、にこちゃんがそう云った。 
  
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:34:47.74 ID:SLBdxrKw0
  
  
  さ、できたわよ、ってにこちゃんが私の身体を返す。 
  頭をぽんと軽くたたくのが手慣れている。 
  妹さんたちにも同じように髪をとかしてあげる姿が目に浮かぶ。 
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:35:14.08 ID:SLBdxrKw0
  
  
  人の足下ばかりも見ていられなくて、 
  バッグからはみ出た日傘とうなじの白さ、 
  赤みの薄い唇と 
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:35:40.45 ID:SLBdxrKw0
  
  
  ドアがばたんと閉まって、施錠の音が耳にざわつく。 
  あの色に誘われて振り向く。 
  
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:36:06.79 ID:SLBdxrKw0
  
  
  ちゃりん、 
  
  と足下ににこちゃんからカギが落ちた。 
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:36:33.12 ID:SLBdxrKw0
  
  
   ◆  ◆  ◆ 
  
  それから、にこちゃんと私の部屋でお話をした。 
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:36:59.52 ID:SLBdxrKw0
  
  
   ◆  ◆  ◆ 
  
  クラクションが鳴る 足下が白黒まだら模様でそこは横断歩道だった また大きな音 
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:37:26.24 ID:SLBdxrKw0
  
  
  やだ、向こうにまだあの子がいる! 
  
  いるはずなのに、 
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:37:52.58 ID:SLBdxrKw0
  
  
 「ねぇ真姫、お昼は食べた? 
  私これから表参道のイタリアンカフェに行くのよ」 
  
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:38:18.93 ID:SLBdxrKw0
  
  
   ◆  ◆  ◆ 
  
  目の前には何故か焼きたてパンケーキ。 
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:38:45.36 ID:SLBdxrKw0
  
  
 「……食欲ないって、私、言わなかった?」 
  
  まあまあ、とレモンタルトから目を離しもせずに空返事を返す。 
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:39:11.69 ID:SLBdxrKw0
  
  
 「私、帰りたいんだけど」 
  
 「もったいない。 
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/09(水) 16:39:38.12 ID:SLBdxrKw0
  
  
 「ねぇ一口もらっていい?そっちのも好きなのよ」 
  
 「好きにすれば。 って、そんなに取るの?」 
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