過去ログ - 朝日奈葵「苗木ととれーにんぐ!」
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29:名無しNIPPER[saga]
2015/11/06(金) 00:29:25.24 ID:sfGYlI770
 私をモノにしようって、怖いくらいだった迫力が、すっかり萎えていくのを感じた。

 今ではまるで――悪いことをした子供みたいな顔。

 そうして伏せた視線が、私の胸を鷲づかみにする自分の指に突き当たって。

 はじめて自分の所業に気が付いたみたいに動揺するのが伝わってくる。

 じりっと、胸に立てていた爪が引き剥がされる。

 じんじん突き刺さるような痛みが鈍くなって、温もりも離れていく。

 きっとすぐに、苗木は私から遠ざかる。

 縺れた視線が、引き絞られて、ぷつりと切れてしまう。


 そんなの、いや。

 
 筋トレの要領で上体を起こす。

 いつだって、考えるより先にカラダが動くんだ。

 退き始めていた苗木の背中を掻き抱く。ぱちん、とお互いの胸がぶつかって、湿った音がした。

「あ、朝日奈さん……?」

 胸に、下腹部に、苗木の鼓動が伝わってくるけれど、私のドキドキは、どこまで伝わってるんだろう。

 私と苗木の間で千切れかけていた視線が、もう一重、二重、線を引いた。


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