過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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138: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:35:28.25 ID:iuS/I4U4o
「鈴羽……? どうしたの?」

 牧瀬紅莉栖だった。あたしが長いことシャワーを浴びてるもんだから不思議に思って声をかけに来たのかもしれない。

「なっ、なんでも……ないよ……」

 無用な心配をかけまいと咄嗟に否定するものの、声が震えてしまっていた。そんな機微を感じ取ったのか、彼女は──

「なんでもない訳ないじゃない。……泣いてるの?」

「泣いてなんて、ない。ないから……」

 できることなら彼女に弱みは見せたくなかった。そうしてしまったら自分が脆弱な人間だということを認めてしまうような気がしたから。強くなければいけないのに、弱い自分を受け入れてしまうような気がしたから。

「鈴羽、開けるわよ?」

 そんなあたしの気持ちに反して、扉がゆっくりと開かれる。今彼女と対峙してしまえば崩れてしまった泣き顔と、この醜い傷跡を見られてしまう。それはなんとしても避けたかった。

「だめ──」

 あたしは反抗の意を示すため、震える声を精一杯張り上げながら叫んだ。けれどすでに遅かった。
 扉は完全に開き、牧瀬紅莉栖の瞳があたしをとらえた瞬間、彼女の目は大きく開かれた。

「鈴羽……あんた……」

 視線があたしの顔を、身体を、傷跡をなぞるように滑っていく。
 隠そうと覆った腕や手の隙間から弱さがにじみ出ていた。あたしは声を出すことができなかった。ただ震えていることしかできなかった。今はどんな言葉を聞きたくなかった。どんな慰めを言われようと、この傷が消えることはないから。
 だけど、そんなあたしに対して牧瀬紅莉栖はただ──

「ほら、早く拭きなさい。風邪、引くわよ」


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