過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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58: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:13:33.83 ID:g0/EBSOFo
「くっ……」

 紅莉栖の様子から見ても状況はよくなさそうだが、最悪の事態をあえて考えないようにした。
 早く救急車を──
 そう思い、白衣のポケットから携帯電話を取り出そうとする。──が、いつもそこに入れてあるはずの携帯の感触はない。
以下略



59: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:14:52.90 ID:g0/EBSOFo
「ともかく、あんたは阿万音さんを担いで! 早くここから出るわよ!」

「え?」

 紅莉栖の声が俺を現実に引き戻した。
以下略



60: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:16:41.25 ID:g0/EBSOFo
「ぜい……ぜい……」

 屋上から一階への階段を下り終えると、どっと脚が重くなった。疲労物質が脚をはちきれんばかりに膨らませ、心臓も張り裂けそうである。それもそのはずだろう。自分1人でもハードなのに、今は人1人背負っている。
 だが弱音は吐いていられない。あたりを見回すと万世橋が目に映った。
 そういえば、近くに万世橋警察署があったはず──
以下略



61: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:18:35.27 ID:g0/EBSOFo
「お、おいどうした……?」

「行くわよ」

 は?
以下略



62: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:20:58.86 ID:g0/EBSOFo
 迫真──そう表現するのがあっているだろう。彼女は中で激しく揺れる感情を必死に押さえ込みながらもこの判断を下したようだ。
 そう説得され、俺は仕方なく紅莉栖の言うことに従うことにした。情けない話、紅莉栖の勢いに圧倒されてしまったところもある。俺は静かに横たえられた鈴羽を一目見つめると、紅莉栖とともにラジオ会館内へと引き返した。
 数十秒も立たぬ間に、救急車のサイレンが近づいてきて止まった。赤い灯火が闇夜に際立って輝いている。救急隊員が矢の飛び出してきて、辺りを見回し始めた。そしてベンチに仰向けに倒れている鈴羽の姿を確認するとすぐに駆け寄っていった。
 彼らは鈴羽の意識がないことを把握すると大急ぎで担架に乗せた。救急隊員の1人が再び辺りを見回す。やがて誰も居ないことが分かると、車に乗り込みけたたましいサイレンを街にこだまさせた。
 遠目で一部始終を見ていた俺は小声でなぜこんなことをするのか紅莉栖に尋ねた。
以下略



63: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:22:14.09 ID:g0/EBSOFo
「阿万音さん、大丈夫だといいけれど……」

 鈴羽を心配する紅莉栖をよそに俺は困惑していた。
 2010年とは状況が変わった人工衛星。
 見慣れているはずの風景のわずかな変化。
以下略



64: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:23:41.86 ID:g0/EBSOFo
 あれから紅莉栖は人工衛星の解体を始めていた。あの後、屋上へ行って急いで解体を行うと言ったのだ。紅莉栖は俺が再び頭を抱えるのを見ると、解体は1人で行うと言い、今まさに作業に徹していた。
 俺はラジ館屋上の手すりから街を見下ろしていた。降りしきる雨はすでに小振りと化しており、優しい雨が俺の手を叩いている。
 先ほど新聞の1975年という記載を見てからというもの、頭痛が再発していた。
 1975年? どういうことだ?
 俺は確か、タイムリープマシン開発に成功した名目で開発評議会を行っていたはず……。
以下略



65: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:25:07.12 ID:g0/EBSOFo
 俺には1つ予感めいた考えがあった。ここがもし本当に1975年ならば、俺たちは物理的タイムトラベルをしたことになる。それも、少なくとも3人以上の人間が同時に、だ。
 とするとなると──

「それとも解体手伝う気になった?」

以下略



66: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:31:08.87 ID:g0/EBSOFo
「なんかおかしいと思ってたけど、まさかあんた……覚えてないの?」

 訝しげな表情をしながら紅莉栖は問いかけてくる。少なくともふざけている様子は見受けられない。
 そんな紅莉栖の様子に、俺は尋ねられずにはいられなかった。

以下略



67: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:32:47.95 ID:g0/EBSOFo
 夜が明けてからというもの、俺たちはせわしなく秋葉の街を動き回った。未だ混乱を隠せない俺は、考えを巡らせるのに必死だった。紅莉栖に関しても疲労がたまっていたのか、終始無言状態。
 日が昇ってから俺たちがしたことは、解体によって手にした廃材を売りさばくことだった。
 どうやら事前に、こういった希少金属が高く売れるということを鈴羽から聞いていたようだ。おかげで大した苦労もなく、ある程度まとまった金を手に入れることができた。
 金は2010年においてきたということだったから、ありがたい話だった。当然この時代で使うことはできないが。
 次に俺たちが成したことは非合法で活動する犯罪組織の連中と接触を図ることだった。
以下略



68: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/01(木) 16:34:07.89 ID:g0/EBSOFo
 難なく犯罪組織と接触できたことは幸運だった。その反面、交渉は難航した。
 それも当然の話だ。犯罪を糧にして生きていく人間からすれば俺たちは幼すぎた。
 キドと名乗る眼鏡をかけた神経質そうな男が対応をしたのだが、最初は話すらまともに聞き入れてくれずにあしらわれた。
 ところが紅莉栖が交渉の材料に、と金を見せつけると途端に奴は一瞬表情変える。それでも奴は難色を示した。金は手に入れたかったはずだが俺たちと取引するのは奴のプライドが許さなかったのかもしれない。
 奴はふっかけてきた。ありえない額を突きつければ、諦めるだろう、と思ったのだろう。
以下略



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