45:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 06:15:04.41 ID:EwL7hHPK0
「悪魔だか何だか知りませんが、分かりました―― もう俺はこれで帰りますね」
「あ、待て善次郎くん!」
「善次郎さん!」
まだ悪魔の存在を認めたわけではないけれど…… 地獄という世界でさえもピラミッド状の階層で成り立っているわけか。
優秀な人間が上に立ち財を成す。下層の人間はそれに従い動かされ、それよりも下の人間はこのように爪弾きにされたり、ボロ雑巾のように使い捨てにされるのだ。人間と同じだ。
どこへ行っても変わることのない世界の摂理。世界の真理。
「善次郎くん、まだ君へ借りを返していないぞ!」
「だからいいですって」
「億万長者か!? お金が欲しいのか!?」
「いりませんよ…… タバコに火をつけるぐらいしかできないのに、無理でしょうよ」
「そ、そんなことは――」
「大丈夫ですよ…… それじゃ頑張って下さいね、お仕事」
帰ったら何をしようか。
こんな長時間無駄なことで拘束されたのは久しぶりだ、帰りに酒でも呷ってやろう。鬱憤晴らしだ。
「善次郎くん――」
「まだ何か?」
「そういえば君、仕事は?」
「――は?」
「いや、仕事だよ仕事。平日の昼間から私服で歩き回っていたようだし」
「そんなことあなたたちに関係ないと思うんですが」
「いやそうだけれども…… 人間は普段どのような暮らしをしているのかと思ってな。見たところ会社勤めではないようだ、学生か?」
おい、どんだけ干渉してくるんだこの悪魔は。
ニートに対して「仕事は?」という質問は禁句である。
俺たちニートはいつもこの質問と戦っているのだ。
例えば美容室へ行ったとしよう―― そこで「今日はお休みですか?」とか「何のお仕事をされているんですか?」とか、そういった第一関門がまず俺たちの目の前に必ずといっていいほど立ちはだかるのだ。
そこで「ニートです、はっはっはっ」とか、「自宅警備員です」とか言えるほどの強い心を持っていない俺たちはたいてい嘘をついてやり過ごすわけだ。
とにかく―― こんな感じで俺たちニートは絶えず世間体という名の敵と戦いを繰り広げている。ニートという名の戦士である。
ちなみに「将来どうするんだ!?」という質問も禁句である。
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