過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
1- 20
971: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/02/25(木) 22:30:57.39 ID:/mUgx/Fs0
◇◆◇◆◇







 血の匂いを嗅ぐわせることなく大きな音を立てて倒れ伏す鎧、後続のそれらも同じように次々と処理していく。巧みな連係を前にして、考えることのできない木偶集団は哀れにも壁としての役割を果たしているとは言い難い。殲滅だけを念頭に置いた思考は対処する術を知らない、魔法に対する心得を装備出来ても、戦術に対する心得など使い捨ての駒が教わっているわけもないのだから。だからこそ、敵ジェネラルはただ漠々と戦列を崩さず迫り、そしてその壁を越えてやってくる者たちもまた漠々と相手を切り付けることだけが行動理由であった。
 ジェネラルの陰に隠れて近づいていた者たちが、その壁を飛び越し現れる。無茶苦茶な陣形、ただ一人でも殺せればよいという考えの元に一斉に飛び出してきたそれらであったが、考えられる人間からすれば予想の範囲内であった。

「リリスさん」
「はい、行かせてもらいますね」

 ジェネラルとは違い、何かしらの仕掛けのある装備を持っている節はなかった。その数四、リリスの口元がつり上がる。それは彼女の竜としての一部分、獣の本能が顔をのぞかせた瞬間だった。
 魔法書を開くと同時に、幾つもの魔方陣が地面へと広がり、それぞれ敵が浮かぶ地面の下へと滑りこむ様に飛び立ち、その真下で確かに彼らを捉えた。そんなことを彼らは気にしない、だからこそ容赦ない制裁を浴びせることができるのだ。

「皆さんに手を出さないでください!」

 詠唱を終えるとすぐに真下の魔方陣が淡い光を放つ、それは優しくも思える光であったが、やがてそのその頭上から迫りくる彼らへと放たれる火球を放つ光へと変わる。空中という避けられない空間で迫りくる火球に成す術もないまま、その爆発を持って終わりが訪れ、動かなくなった骸が生々しい音を立てて地面へと落下した。
 すでに壁は崩れ去り、カムイたちの目にはあと少しに迫る老兵の強かな面影が見える。刃を交えることに躊躇はないと、カムイの足は力強く駈け出した。
 無限渓谷から落ちて死んだと思われたギュンターと再会したとき、一番に喜びの声をあげていたのはカムイであった。そして、白夜と暗夜、双方の問題に一つの終わりを迎えた時、共に闘って行きたいと約束さえしていた。
 それを信じて戦ってきたカムイにとって、この現実がどういったものなのか想像に難しくない。誰にでもわかることなのだ。
 すでにギュンターへの道は開かれている。今さらそれを止めることはなく、そもそもここで決意が揺らぐような人ならば、透魔の民が最後の砦としていたあの場所で、裏切られたときにその心は折れてしまっていたはずだからだ。
 でもそこで折れることがなかったのは、支えてくれた兄妹たちがいたからであり、その支えられた分、カムイには支えなければいけない人々がいた。
 ギュンターに近づくにつれて、皆の顔に色々な感情が込み上げて来ているのが見て取れた。
 ここにいる五人にとってギュンターという人物の影響はかなりのものである。城塞で過ごした時間、彼らの中でギュンターというのは生活の中でいなくてはならない人であったのだ。
 カムイにとっては育ての父であり、フェリシアとフローラにとってはフリージアという単語を利用して迫ってくる無頼漢から守ってくれた騎士であり、リリスにとってはカムイと一緒にいさせてくれるために城塞にいることを許してくれた恩人であり、ジョーカーにとっては今の自分を構成するすべて教えてくれた師匠であった。
 全員、ギュンターと出会うことがなければ、悲惨な運命を迎えたことを否定できない者たちばかりだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
992Res/1008.69 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice