過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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973: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/02/25(木) 22:45:43.14 ID:/mUgx/Fs0
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 ギュンターは馬に跨り最後となる魔法書の詠唱を始めていた。馬に取り付けられた盾は長き間使ってきたこともあって無数の傷が走っている。そして、その目にあるのは向かってくるだろう殺すべき対象を刈り取るという信念だけであった。

「ふっ、やはり命令だけに忠実な駒では、お前たちを倒すことはできないということだな」

 手にした槍に力を込め、辿り着いた者たちをその視界に捉える。

「……ギュンターさん」

 その言葉と一緒に四つの足音が追い付く。ギュンターと戦うことを選び、カムイと一緒に目指すことを決めた者たちがそこにいた。それらはギュンターを静かに見つめているだけで、言葉はなかった。 

「そうか、決めてきたということか。しかし、その信念が勝つというわけではないぞ」
「ええ、その通りです。ですが、あなたに殺されるつもりはありません、そして殺させるつもりもありません」
「ふっ、そうか」

 言葉とともに最後の詠唱が終わりを迎え、周囲に最後と思われる透魔兵が姿を現し始める。もう、この先詠唱する時間や隙はない。これがギュンターにとって最後の援軍と言えた。
 だが、その顔に悲観や落胆の色はない。手にあるすべてを使ってギュンターは命令に忠実に従う、ハイドラの課した命令はカムイを器にして差し出すことでしかない。ギュンターにとっていえば周りの者などどうでもよかった。

「覚悟しておけよジジイ」
「ジョーカーか、別に貴様の命などどうでもいい。今この場から去るのなら、その命は助けてやるぞ?」
「寝言は寝て言え、カムイ様を守らずに逃げるくらいなら、自殺してやるよ」
「そうか、なら今すぐ自害すればいい。所詮、お前では守り切れんからな」
「てめ――」
「ジョーカーさんだけじゃありませんよぉ! 私だってカムイ様を守ってみせるんですから!」
「フェリシア、話に割り込んでくんじゃねえ!」
「ふええ、ごめんなさいぃ」

 そのやり取りはどこかギュンターにとって懐かしいとさえ思える。このあと誰が二人の間に入るのかも予想できていた。

「二人とも、無駄話はそこまでよ。準備しなさい」
「姉さん、ごめんなさい」
「言われなくてもわかってる」

 フローラが二人を諭す。そして、カムイの横には最後の一人の姿がある。最後に現れた一人、そして真実を知った今でならわかる。本来ならこちら側にいるべき人物。

「カムイ様」
「わかっていますよ、リリスさん。サポートをお願いしますね」
「はい、任せてください」

 そのすべてが城塞での生活風景で、そこに最後現れるのはいつもギュンターの仕事であった。
 だからこそ、カムイ以外の人間の命になど興味はなかった。

「カムイ、その命を亡くし、ハイドラ様への器とさせていただきますぞ」
「そうはさせません。あなたに私を殺させるわけにはいきませんから」

 カムイの構えに合わせて、皆の準備が整う。カムイ達の増援はいずれ至ることだろうが、ギュンターにそんなことは関係なかった。
 使い終えた魔法書を床へと落とし、自身の使い古してきた大槍に力を込めた。

「では、行くぞ!」

 その言葉を合図に両者の足は確かな力を持って床を蹴った。


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