過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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975: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/02/25(木) 22:56:01.47 ID:/mUgx/Fs0
◇◆◇◆◇







「カムイ様、ご無事ですか!」
「ぐっ、リリスさん。なんとか、死なずには済みましたけど」
「今すぐ治療します、動かないでください!」

 そうしてリリスは魔法書を閉じる。すでに火球は姿を失い、ギュンターの進行を邪魔するものはいなかった。だと言うのに、リリスはギュンターに背を向けて魔法の杖を取り出し詠唱を始める。それは私を殺しても構わないと宣言するも同じだった。

「ほう、それがお前の忠誠か。無駄な死に方を選ぶ必要はない。今すぐにそこをどけ!」

 ギュンターの持つ大槍が再び構えられる。それにカムイは力を入れようとするが、すぐに治療が終わるわけではないので、剣を杖のようにして立つことしかできない。

「リリスさん、そこを退いてください。ギュンターさんが来ます」
「わかってますよ。もうすぐ終わりますから、安心してください」

 それは嘘だとわかった。かなり時間の掛る治療魔法を施しているのだ。多分、治療が終わるのとギュンターがここに達するのはほぼ同時、だと言うのにリリスは動く気配を見せない。

「くっ、リリスさん。このままではあなたが死んでしまいます。私なら、どうにかもう一度受け切れるはずです。だから……」
「いいえ、受け切ってもその次にやられてしまいます。そこでカムイ様がやられてしまったら、私もやられてしまいます。だから、ここはカムイ様を助けることの方が共倒れにならない選択なんです」
「それは困ります! 私はサイラスさんになんて謝ればいいんですか!」
「大丈夫です。サイラスさんは私のしたことを認めてくれます。だって、サイラスさんはカムイ様に仕える私に恋してくれたんですよ」

 顔を赤くしながらそう答える。そこには死が迫っているというのに、慌てている様子はなかった。
 ギュンターの馬が駆け出す音が響き始める。一刻の猶予もないというのに、カムイの体には未だ力が戻らない。治療魔法の完成はあと少しに迫っていた。

「私はこの戦いが終わるまで、カムイ様のために命を掛けるって決めて、サイラスさんはそれを許してくれました。だから、私はあなたに仕える一人の従者として、今も一緒にいられるんです」

「リリスさん……」

 杖に光が灯っていく、優しく温かみを持った光、やがてそれがカムイの体を包みこむ。その瞬間にギュンターの姿は背中にまで達していた。ほぼ同時にリリスの手が動く、カムイを突き飛ばすように手を前に突き出す。それに合わせてカムイが後ろへと転がると共に、重たい音がリリスの体を揺らした。

「っ!!!!!!!」

 脇腹にめり込む大槍の腹、骨の軋む音が内部からリリスの体に響き渡ると、そのまま体が数回跳ねて床へと倒れる。死にはしなかった、死にはしなかったが、カムイ以上にもろにダメージを受けたためにその体にはまったく力が入らない。

「リリスさん!!!」

 叫びと共に両足に力を込めてギュンターへと肉薄する。肉薄して、そのギュンターの表情に違和感を覚えた。
 一瞬だけ、ギュンターは自分のしたことを理解できていなかったように、その槍を見据えていた。わなわなと手が震えているようにも感じられるその仕草は、どこか信じられないという叫びさえも感じられる。ギュンター自身が行ったことに関して、困惑しているという印象であった。

「な、なぜ、ぐっぐおあああああ」

 突然の叫びにカムイの動きが一瞬だけ止まるが、今がその時だと一気に剣をギュンターに向けて繰り出す。繰り出した剣先は物の数秒でギュンターに肉薄するかもしれないという場所まで向かい。甲高い音でによって弾かれた。

「……ふっ、やはりこの程度か」

 その顔は先ほどまでの真剣なギュンターとはどこか異なっているように感じた。先ほどまでの勝負をするために身を捧げていた姿とは、明らかな異質さがある。そしてその言葉は自分に向けられたものではないと、カムイにはどこか理解できてしまった。

「カムイ、貴様には無力さをくれよう。出来損ないの役割としては丁度いい!」

 大槍の持ち方が変わる。突き刺すことに念頭を置いた構えると、リリスへと向けて進み始めた。


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