過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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982: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/02/25(木) 23:28:02.75 ID:/mUgx/Fs0
◇◆◇◆◇







 それは俊敏に背を低くして間合いを詰め、ギュンターの体がカムイへと向き直ったところで一気に姿を現した。

「ジョーカーさん、今です!」

 カムイの一声に反応して、その手に握られた暗器の一閃がギュンターの握る盾の握り手に差し込まれる。瞬時の出来事に対応することのできないギュンターは、その握り手に差し込まれた暗器を外す瞬間を見失う。それはまさに指の骨を粉砕する勢いをもって押し込まれた。
 激痛に体は悲鳴を上げるが、ギュンターはその手際の良さに内心安堵していた。昔は何をやっても覚えが悪く、掃除すらこなせない木偶の坊だったのに、今ではこうして主の命令通りに物事をこなす仕事人になっているだから。

「ジジイ、見直したか?」

 挑発的な笑みを浮かべて血に濡れたギュンターにジョーカーは囁く。うまくできただろうと見せつける姿はまるで子供のようで、どこか褒めろと言っているようにさえ感じられる。
 この顔は今までよく見てきた。幾度となくできただろうと自慢げに笑う、その度に粗を見つけてやったことを思い出せる。ギュンターにとって言えば、ジョーカーは唯一の弟子と言える存在だった。

『そんなこともできんとはな』
『うるせえ、今までできてなかったことがすぐできるわけねえだろうが』
『口の悪さだけは一級品ではあるがな』
『主だけに尽くせって言ったのはジジイてめえだろうが! ちくしょう、今度こそ……』

 その粗探しはもっと長く続くものかと思っていた。もう少しの間、授ける術がまだあったのかもしれなかった。それは水泡のようにギュンターの手から離れていくというのに、そんな夢を見てしまう。

『……ふっ、このままではお前のことを一人前だと認める日は、永遠に来ないかもしれんな』
『けっ、上から目線でその態度はどうなんだ?』
『お前と同じだ。私もカムイ様だけが主、そしてお前は不出来な男だ、遠慮する必要などありはしない。それとも、優しくしてもらいたいのか?』
『ジジイに優しくされるとか、明日は槍でも降るんじゃねえかと心配になるからやめろ』
『たしかにな。想像して見れば、これは気色悪い以外の何物でもないというものだ』
『ああ、カムイ様が俺を慰めてくれる以上、ジジイから受け取るのは厳しさで十分……だが、もしも俺が見事に事を成し得た時は……いや、なんでもねえ』

 そう言って言葉を濁したジョーカーはどこか恥ずかしそうにしていた。今思えば、そういうことを素直に強請るのも槍が降って来そうな出来事かもしれないと、内心でギュンターは笑った。

(ふっ、わかっているジョーカー。主の命令通りに職をこなしている、よく出来たものだ。しかし、だとしても及第点だがな)

 斬り裂け、骨までもが露出した左手はもはや盾を持ち続けることもできない。大きな音が鳴り響く、だが痛みを理解しない憎悪は槍を振るう。それをジョーカーは軽々と避けた。
 最後の役目が切り替わる。勢いのままに振り返った先、眩い炎のような剣を構え待ち構える最後の一人がいた。


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