6: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:32:22.51 ID:1tXlvZV40
誰にも何も言わずやって来たのに、どうしてプロデューサーさんがここにいるのでしょうか。
「どう……して……?」
7: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:32:51.16 ID:1tXlvZV40
今朝のちひろさんとの話は、ここを取り壊すことが決まったという話でした。
訳も分からず受けたオーディションで、訳も分からず合格して、やって来たこの事務所。
ホラー映画とかに出てきそうな外観が最初に気に入って、でも、レッスンしたり、皆とお話したりしたこの事務所が、私は好きでした。
おっきなお城のような事務所に変わった今でも、私はこの場所が、好きです。
8: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:33:20.99 ID:1tXlvZV40
「わ、私は……ここが好き……だから。な、なくなっちゃう……のは……いやです」
こんなことを言って、困らせちゃうかな。
けれど、これが私の本心だから。
9: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:34:08.05 ID:1tXlvZV40
「でもな、小梅。確かにここは取り壊される。けど、ここで皆と過ごした時間は、ちゃんと小梅の中にある」
むき出しのコンクリートの床に、ゴツゴツとした靴音が響きます。
音が止むと、プロデューサーさんが目の前にしゃがんでいました。
10: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:34:40.92 ID:1tXlvZV40
「さて、そろそろ帰ろう。いくら元事務所とはいえ、こう薄暗いとなんか、出そうというか……」
「だ、大丈夫……だよ……み、みんな一緒に……今の事務所に……行ったから……こ、ここには誰も……」
11: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:35:19.68 ID:1tXlvZV40
プロデューサーさんに手を引かれて、外に出てコンクリートの階段を降りまします。
帰り際、少しだけ振り返ると、何となく建物が悲しそうに見えました。
その姿に、ここが、終わってしまった場所なんだと、思えてしまって。
だから私は。
12: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:35:45.55 ID:1tXlvZV40
――――それから一年が経って。
「よし、それじゃあレッスン行くぞ」
13: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:36:11.63 ID:1tXlvZV40
「さ、乗って」
促されるまま乗り込み、車は滑るように駐車場を出ていきます。
14: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:36:38.82 ID:1tXlvZV40
「あ、あの……プロデューサーさん……レ、レッスン場所って……もしかして……!」
プロデューサーさんの方を見ると、してやったりといったような表情をしていました。
見慣れた景色の中に、見慣れない、けれど、どこか懐かしい佇まいのビル。
15: ◆sIPDGEqLDE[sage saga]
2015/10/07(水) 15:37:42.63 ID:1tXlvZV40
終わりです。
6年位時間が経っている事を>>1に書くの忘れてました。
少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
16:名無しNIPPER[sage]
2015/10/07(水) 15:46:08.02 ID:bP9mcSsFO
おつつ
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