3: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/10/09(金) 17:56:03.81 ID:FKMhud4no
「は?」
瞬間、空気が凍りつく。
ドスのきいた声を出したのは塞だった。
「は? 何これ? は?」
塞以外のメンバーが沈黙に包まれる中、塞の口は止まらない。しきりに「は?」を繰り返す。
その間、他のメンバーの視線はあるところをいったり来たりしていた。そこはちょうど塞の頭頂部に当たった。
塞の視線が皆に向く。
皆の視線が頭頂部からさっと離れた。
「胡桃ィィィィィッ!!」
「あ、あ、あ……いや悪気はなくて……こんなのが全国で売られてるなら、教えないとって……」
「……っ!!」
塞が凄まじい形相で歯を食い縛る。その姿は飢えた獣もかくやという獰猛さを放つ。
「さ、さえー……落ちついて」
「は? 何? 私は至って冷静だけど?」
「至って冷静な人はそんなぎらついた目で殺気を飛ばさないよー……」
塞と豊音が薄氷のやりとりをする傍ら、おずおずと皆に向かって手が差し出される。
雑誌を持つ胡桃の手だ。
「これ……一応、説明みたいなの載ってるけど」
それは、今回のリストに関して注釈を付け加える文章。そこの文章は豆粒のように小さくなく、普通のフォントだった。
「何々……『エイスリン・ウィッシュアートさんは一説によると聖書の天使に近しい存在ともいわれるが、根拠に乏しいためリストアップは見送られました』……?」
だるそうにしながらも白望が読み上げる。
「『でも宮守は五人(体?)揃っての宮守。何とかして五人(柱?)は揃えたい、という意見を尊重し、今回のリスト化と相なりました』……?」
そこで説明は終わっている。
「……お、おわり?」
「…………うん」
『…………………………………………』
重苦しい沈黙が訪れる。
「…………あー……」
「……う、うん……」
「……………………」
誰もが次の言葉に詰まる。怒りをあらわにしていた塞でさえ、口を閉ざし、言葉を発しなかった。
「でも……」
そんな中、塞が口を開く。皆の視線も自然と吸い寄せられた。
「エイスリンが入ってないなんて……やっぱりイヤだね」
皆瞠目し、目を輝かせる。頭の後ろに片手をやりながら言いにくそうに呟かれた塞の言葉。ぶっきらぼうだけれども、確かなあたたかみのあるそれは、皆の胸に届いていた。
ふっと明かりがともるようにして皆の顔に笑顔が浮かぶ。
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