過去ログ - 安部菜々「Hello, world!」
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1:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:23:13.44 ID:IEVGHL4B0



もうダメって思ってから、割となんだかやれている。
死にきれないくらいに丈夫で、なんだかちょっと恥ずかしい。

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2:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:23:47.27 ID:IEVGHL4B0
『まるで虹のネックレス まばゆい絆……』

346プロダクション、サマーアイドルフェス。
雨上がりのステージの上、大団円となるアンコールの曲を歌い輝くアイドル達の姿を。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:24:16.72 ID:IEVGHL4B0
目が覚めると、くすんだ天井と使い古した毛布が視界に入った。
ひどく頭が痛かった。昨日の酒が残っていたのか……と考えて、居酒屋でやけ酒をしていたのを思い出す。
どうやって帰ってきたのかすら定かではなかったが、起きようとして足首が痛むのがわかった。

寝ている頭をインスタントのコーヒーで叩き起こし、惰性でスーツに着替える。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:26:34.94 ID:IEVGHL4B0
地下アイドル、安部菜々。
俺は小さなステージで踊る彼女に可能性を見出し、新設されたアイドル事業部へと勧誘した。
その時の菜々の表情を、俺はずっと覚えている。

恋みたいなものだった。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:28:10.22 ID:IEVGHL4B0
菜々がCDデビューできたのは、常務が帰国する一ヶ月ほど前……
ちょうど、シンデレラプロジェクトが軌道に乗り始めた時期のことだ。
菜々が起死回生の切り札として作り出した「ウサミン」という強烈なキャラクターは、
ソーシャルゲームの広報の目に止まり、イメージキャラクターに抜擢された。

以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:28:39.44 ID:IEVGHL4B0
職場に着いても、することがあるわけでもなかった。
オフィスは閉鎖、営業しようにもアイドルの方向性はプロデューサーには決められない。
こんな状況でプロデュースもクソもあるか……とは思うが、
こんな状況になるまで成果を出せなかったのもまた、事実だった。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:32:02.87 ID:IEVGHL4B0
「あれ、プロデューサーさん? おはようございます!」

菜々に声をかけられたのは、そんな風に社内をうろついている時だった。

「……菜々?」
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:33:25.08 ID:IEVGHL4B0
「はい。ナナ、アイドルですからね! レッスンしてないと、落ち着かないんです!」

そう言って、菜々は笑った。
一方的に告げられた、命令のことなんて、なんでもないかのように。

以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:34:36.55 ID:IEVGHL4B0
だから、俺の口から漏れ出た言葉は。

「……辞めちまうか、このプロダクション」

「そうですね、辞め……って、えぇ!?」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:35:37.66 ID:IEVGHL4B0
じゃあ、とエレベーターホールに向かう俺を、

「プロデューサーさん!」

菜々のよく通る高い声が、呼び止める。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:36:56.87 ID:IEVGHL4B0
そうして……リズモンのイベント当日。
イベントといっても、大したことをやるわけじゃない。
イメージキャラクターとしての衣装でステージに上がり、ゲームの宣伝をするだけ。
タイアップ先との仕事とはいえ、仕事である以上は上からの指示は絶対だ。
いわゆるバラエティ路線のキャラクターとしての安部菜々を、出すわけにはいかない。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:38:22.87 ID:IEVGHL4B0
喫煙所のドアが開く。
入ってきたのが蛍光グリーンのスーツだったのは、少し意外だった。

「なんだ。喫煙者だったのか、千川」

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:41:28.57 ID:IEVGHL4B0
「自分が育てたアイドルがアイドルとして死ぬ姿を、俺に見届けろっていうのか!?
 アイドルが望んだわけでもない、上の命令で決まった一種の強制引退だ! 冗談じゃない!
 そもそも菜々は、パートナーが俺じゃなけりゃあとっくにトップに立ってんだよ!
 ウサミンに拘らなくったってデビューはできたし、
 ウサミンのままだって実力で常務を黙らせることだってできたはずなんだ!
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:49:10.71 ID:IEVGHL4B0
「プロデューサーさん。だったら尚更、あなたは彼女のステージに行くべきです」

千川は……そう言って、俺の手を握った。

「あなたがつらいのなら。菜々さんのファン一号でもあるあなたが、悲しいなら。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:54:57.78 ID:IEVGHL4B0
「トップアイドルに育てられないからって、営業がうまくいかないからって……
 あきらめないでください。あなたのアイドルと、ちゃんと向き合ってあげてください。
 私はアイドルが大好きです。でも、彼女たちを導けるのは、プロデューサーさんたちだけなんです」

手を引かれて、立ち上がる。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 02:59:18.77 ID:IEVGHL4B0
千川の用意したタクシーに飛び乗り、会場へと向かう。
ゲームショーに立ち並ぶブースの一角。

「ミミミン、ミミミン、ウーサミンっ!」

以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 03:06:26.27 ID:IEVGHL4B0
彼女がこの場にいるということは恐らく、あいつも来ているのだろう。

「……菜々」

俺の呟きが、聞こえたとは思えない。
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 03:10:41.31 ID:IEVGHL4B0
「……やはり、いらしていたんですか」

深みのある、低い声。
振り返らずとも分かる。アイドル部門の、エースといえる存在。

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 03:13:59.15 ID:IEVGHL4B0
……十二時の鐘が鳴る。
俺が安部菜々にかけたウサミンの魔法が、解ける……
俺が見つけた、俺を信じてついてきたアイドルを、俺の手で。

「……なあ。お前、常務から裁量権与えられてんだろ。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 03:20:02.73 ID:IEVGHL4B0
「それで? 彼が彼女を導いて、輝くステージの上に連れて行くのを、あなたは指を咥えて見てるだけ、と?」

「……辛辣だなあ、おい」

苦笑しながら、俺はウーロンハイを煽った。
以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 03:22:28.72 ID:IEVGHL4B0
「なあ、千川」

「なんですか?」

「俺は、無能だと思うかい?」
以下略



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