過去ログ - 速水厚志「ハッピーエンドを取り戻す」
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名無しNIPPER
[saga]
2015/10/31(土) 21:07:03.72 ID:08xPns3X0
二番機、黄色い軽装甲の足元で、滝川は毛布にくるまっていた。
「……今日まで、本当にありがとうな」
膝まづいている軽装甲の機体表面に、そっと触れる。
「最後まで、よろしく頼むぜ」
語りかける滝川の背後に、足音が近づいてきた。
「整備班は、明日いっぱいで撤収します」
「知ってる」
生真面目な声色に、そっけなく返す。
「……一緒に、行こうよ」
やっと絞り出したような声が、背中をくすぐった。
もぞりと動いて、滝川は振り返る。
今にも泣き出しそうな顔で森精華が立っていた。滝川も立ち上がり、向き合う。
「それは、できねぇ」
「どうして」
切迫した声が、潤んだ瞳が、訴えかけてくる。けれど滝川はきっぱりと言った。
「俺は、そのためにここにいるからだ」
「なによ、それ……意味わかんない」
うつむき、バンダナを外し、顔に押しあてた。泣いているのか?
滝川は手を伸ばしかけて、ためらった。
「こんなっ……こんなことになるなら、こんなふうに終わっちゃうぐらいなら! とっくにやめてればよかったのに! 正義の味方ごっこなんて!」
「……俺達が軍をやめて、ここにいなかったとしても。他の、どこかの誰かが、血を流して、涙を流すだけだ」
「それでいいじゃない! 何がいけないの!」
滝川は困ったように、頭をかいた。
こんなとき、もっとうまく言えたら。かっこつけた台詞の一つでも言って、肩を抱いて、愛を囁いたり。
ちくしょう、俺ってばなんにも成長してねぇ。
「それでも……よかったんだろうけどさ」
ただ、思いのままを言葉にするしかない。
「けど、俺は決めたんだ。俺が血を流して、どこかの誰かを守るって」
森が、少しだけ顔をあげ、赤くなった目で滝川を見る。
「……あんただけは、普通だと思ってた。……いつの間にか、化け物になってたんだ」
「バケモノか。それもいいかもな。バケモンになって、それで、生きて帰って、抱きしめられる人がいるなら」
「…………帰ってこれるの?」
問いかけには、答えられなかった。
ただ、濡れてぐちゃぐちゃになったバンダナをぐいと奪って、ゴーグルを頭に乗せてやった。
森はいっそう泣いてしまったが、バンダナを鉢巻のように結んだ滝川は、なぜかそれだけで、絶対に死なないと、そう自信が湧いてきた。
「行ってくる」
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