過去ログ - 速水厚志「ハッピーエンドを取り戻す」
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名無しNIPPER
[saga]
2015/10/31(土) 21:35:08.24 ID:08xPns3X0
九月十四日 午前十時 阿蘇市街
背負ってきたセムティックスを無意味に爆破され、幻獣の戦線は崩壊。
以後、精神支配による統率をも失ったか、各個やみくもに進撃する敵を人型戦車、山岳騎兵が奇襲と退避を繰り返すゲリラ戦法で掻き回した。
さらに戦車部隊が敵集団の先頭を押さえている間に、爆発せず回収したセムティックスでトラップを多数設置。
退がりながらも誘導し、爆破トラップによって敵幻獣の数を削った。
そんな戦いを三時間と続けた頃だった。
「もう無理よ! 操縦席から下りて!」
散々応急処置的な修理を受け、装甲も人工筋肉もボロボロになった黄色の軽装甲が、バズーカとアサルトを手に立ち上がろうとする。
その足元で、森が泣きそうになりながら叫んでいた。
「機体もあなたもとっくに限界がきてる! 戦えていることがおかしいの! これ以上は本当に死んじゃうっ……早く下りて!」
そんなの、俺が一番よく分かってら。
滝川は軽装甲の操縦席内で、ぐわんと揺れ動く自分の頭を、拳でぶった。
しっかりしろ、滝川陽平。お前の仲間は、お前以上に傷だらけになりながら、まだ戦っているんだ。
「頼むぜ……あとちょっとだけ、無茶させてくれよ」
森と、軽装甲と、自分の身体に語りかけ、戦場へと踏み出そうとした。
その足がもつれ、機体が傾く。
「うわぁっ!」
倒れる。まるで初めて乗った時のような、情けないミス。
やばい! 整備機材と森を巻き込んじまう……!
とっさに身を捻り、倒れる向きを変えようとした。が、大きく傾いた機体は、傾いたままガクンと宙ぶらりんに止まった。
「な、なん……」
「はっはっは! いい意地だ。ここまでよく頑張ったな、イエロートータス君」
真紅に塗られた、エースの軽装甲が滝川機の肩を支える。
「あ、荒波指令っ」
「あとは俺に任せろ。俺達に、任せろ」
トータス昇格、アルマジロじゃないのかよ。なんて言う間もなく、滝川機を寝せると赤い軽装甲は走り出した。
その後ろに、都市迷彩の栄光号数機も追う。
「全軍抜刀! 全軍突撃! 我に続け! アールハンドゥガンパレード!」
勇ましい荒波の掛け声に、いくつもの声が重なっていく。
「アールハンドゥガンパレード! 友軍を救え!」
「アールハンドゥガンパレード! 友を助けろ! 正義に従え!」
アールハンドゥガンパレード! アールハンドゥガンパレード!
野太い声が、甲高い叫びが、静かな怒声が、果敢な雄叫びが、
鳴りやまず後続し、戦場へと突き進んだ。
藤代、田中、島、村井、植村、箕田、能見、中西、久萬、果てはリポーター桜沢レイの声まであった。
百十六師団、海兵旅団、二十一旅団、十三連隊、福岡に待機していた全ての兵が突撃する。
そしてその様子は、三番機からの映像に代わり桜沢レイ率いる報道部隊が映し出し、実況中継して全国に流す。
祈りは届いた。
儀式は成ったのだ。
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