過去ログ - 【ゆるゆり】BAR Funamiの日常
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13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/09(月) 00:39:37.21 ID:Ms5wpsxYo



お客が来なくたって、お店は開けなければ。開けないことには、お客様は来てくれない。

そんな心構えをしっかりと持ち合わせている結衣が、翌日もいつものようにお店の看板を「OPEN」にしてグラスを拭きながら待っていると、ものの数分もしないうちにカランコロンとドアの飾りが鳴った。


毎日毎日やってくるあの客に向かって、背中だけで結衣は話す。


結衣「お前ほんと暇だな……」

「…………」

結衣「いい加減にしてくれよ……昨日は本当にひどかったぞ。あんなこと続けられちゃ、この店本当につぶれちゃ……」


そこまで言って、いつもと違うような違和感を背中に感じた結衣は振り返った。

完全に京子が来たと思っていたのに、そこにいたのは昨日のお客さん……綾乃だった。


結衣「うわあああ!! お、お客様……!」びくっ

綾乃「ど、どうも」

結衣「あ、ああっ、今のはその……勘違いで、違いまして! お客様に向けて言った言葉では無いので、お気になさらず……!」

綾乃「ええ、はい……」


また昨日のぎこちなさと緊張が、今のミスで一瞬にして蘇ってきてしまった結衣だが、それでもなんとか心を落ち着けて昨日と同じ席に案内した。


今日はあかりはいない。ちなつもまだ来てなければ、あの皆勤賞の京子さえまだ来ていない。結衣一人だ。

たった一人で、新規のお客さんを相手にするのはどれくらいぶりだろうか。ひょっとしたら、店がオープンして最初に京子が来店したとき以来かもしれない。


誰にも邪魔されない環境がついにできた。しかも相手は二日続けて来てくれた人だ。

結衣の勝負どころだった。赤と黒のチェックのネクタイをきゅっとひきしめ、綾乃に向き合った。


結衣「昨日はどうもありがとございました。お代が多かったので、おつりの分はお帰りになるときにお渡しいたします」

綾乃「ああ、すみません……昨日は急いでたもので」


急いでいた理由は聞かないでおく。来店したときは少し泣いていたのだし、諦めがついたとかなんとかいう昨日の意味深な言葉も忘れたわけではなかった。ワケアリ、という感じは鈍いあかりでさえ気づいていたことだろう。

綾乃は昨日のようにコートを着ておらず、簡単だが気品のある服装をしていた。こういうお客がいつもいてくれたら、雰囲気のよさに磨きがかかっていいなあ……とそんなことを考えていると、


結衣「…………」

綾乃「…………」


二人の間に、また無音の沈黙が生まれてしまった。


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