13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:13.11 ID:fk92G9zco
じっと浴室の扉を見ていると……夢の中で感じた得体の知れない恐怖が少し蘇って、思わず鳥肌がたった。
この浴室自体はまったくもって普通の場所だ。勝手にシャワーが出ることなんて絶対にないし、夢の中で起こったようなことはもちろん過去に一度も無かった。全ては夢の中の出来事であり、私はあんな光景を想像したことさえもないのだ。
しかし私は見てしまった。あれが寝ているときの幻覚だとしても、心にはしっかりとあの不気味な光景が残ってしまっている。出っ放しのシャワーをこの手でひねって止めたし、その時足元にシャワーの水が少しかかった感覚だってした覚えがある。
“体験”はしていないが、確かに“経験”した状態になってしまっている。
だから私は怖いのだ。経験があるからこそ、この浴室に恐怖を感じてしまう。近くに立っていることさえ怖いと思ってしまう。
結衣「…………」
たったそれだけのことなのに、冷静に分析しても貼りついた恐怖をすぐに消し去ることはできなかった。
さっさと顔を洗って京子のところに戻ろう。今日は楽しい一日のはずだった。これからずっと京子の冒険を見守りながら、クーラーの効いた涼しい部屋でお菓子を食べ、夜が更けても遊び続けるのだ。
流水をざばざばと顔に当てたとき、初めて自分の眼が泣いてしまった後のように熱くなっているのがわかった。
涙こそこぼれ落ちなかったようだが、よく見ると少し充血している。夢の中で自分が泣いていた記憶はあったが、現実の私まで涙していたというのだろうか。
結衣(……恥ずかしい)ふきふき
せっかく友達が遊びに来てるのに居眠りこいて、その上悪夢を見て泣いているなんてちゃんちゃらおかしな話だ。京子に笑われてしまうことだけは避けたかった。
でも今は……たとえ笑われることになってもいいから、京子の笑顔を見たい……とも思った。
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