14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:53:45.82 ID:fk92G9zco
――――――
――――
――
―
……眠らないように気を付けていた。それだけを覚えている。
あんな夢を見てしまった後だ、再び眠りの世界に行ってしまうことに少しだけ恐怖していた。夜になれば嫌でも眠くなってしまうだろうが、それ以外の居眠りなんかでまた夢の続きを見ることにでもなったら耐えられない。
それなのに……はっと気が付いたとき、私は自分の家の前にいた。
結衣「……!?」
辺りを見渡してみる。じりじりと照らす赤い夕焼け。ヒグラシが遠くで鳴く夏特有の環境音こそしているものの、付近に人の気配はなく……変に静かであった。
そして……私が今立っている場所はちょうど、先ほどの夢で私が見たくなかったコンクリートの地上。
結衣(……なんで……)
明確な理由なんてなくても感覚だけでわかってしまう。これはさっきの夢の続きだ。
ふと足元に異常がないことを確認し、少しだけ安堵した。もしここで先ほど夢の中でも想像してしまった、ベランダから飛び降りた京子が倒れていようものなら……きっと私はすぐに壊れていたことだろう。
夕陽がじりじりと私の首元を焼く。辺りには野良猫の影さえも見えず、きょろきょろと付近を確認しても本当に誰一人いないようだった。
結衣(京子……)
外から自分の部屋のベランダを見上げる。自分の部屋とはいえ、今あの部屋に帰りたくはなかった。また不気味な浴室が待っているのかもしれないし、そもそも鍵が開いているかどうかも怪しい。いずれにせよひどく居心地が悪い場所だ。
そして……きっとあの部屋に、京子はいない。
誰かがいた気配だけが不気味におかしく残っていて、一人ぼっちの私をからかって音もなくあざ笑っている。私の部屋なのに私の味方はひとつもいなくて、あそこに居続ければ私はきっとおかしくなってしまう。
考えているだけで胸が痛い。足がふるふると震える。暑さのせいもあってか頭の奥がぐわんぐわんと揺れ動き、膝に手をつかなければ立っていることすらできなくなった。
56Res/70.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。