過去ログ - 結衣「いやな夢」
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:55:46.47 ID:fk92G9zco
裏口に周ってみる。そこには存在だけは知っていて、私は使ったことのない勝手口があった。もしかしたらここが開いているんじゃないかと軽い気持ちで手をかけ、くいと引っ張る。



……開いた。


結衣「…………」


途端に呼吸が苦しくなる。以前の夢で感じた得体の知れない恐怖に似たものが私の意識を包んでしまう。


だがこんなことではいけない、こんなところで迷っている場合ではない。気持ちを奮い立たせ、顔をぶんぶんと振って恐怖を振り払った。


私は京子に会わなきゃいけない。京子の手を今すぐにでも握ってあげなきゃいけない。親御さんに何て言われてもいい、京子をこの静かな世界から救い出してあげなきゃいけない。その気持ちだけを強く持って、歳納家への無断侵入を試みた。



家の中はとても静かで、窓の外から眺めていた通りのままに誰もいない空間になっていた。


何度も来たことのあるこの家。リビングは掃除が行き届いているのか散らかっている様子すらなくて……この家にいつもあったはずの生活感が感じられなかった。


大きな窓から差し込む夕陽は相変わらずその色を変えず、まだ怖いほどに赤いまま。そうして照らされた室内は、もう私の知っているこの家の姿ですらないような気がして……私はいたたまれなくなってリビングを後にした。


身体の芯を抜き取られたようにバランスが取れない。恐怖のせいかなんなのか、私の身体はいつの間にか壁に手をつかなければ前に進むこともできなくなっていた。


家の中に虚しく響くのは自分の足音と荒い呼吸の音だけ。それが私から希望を奪っていく。思えばこの家どころか世界中から、自分以外の発する音が聴こえてこない。それでも静かに京子の名前を呼びながら、やっとのことで京子の部屋の前に立った。



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