5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:48:01.41 ID:fk92G9zco
冷蔵庫の前まで行ったとき……何かの物音を感じた。
耳を澄ますと、やはりノイズのような小さい断続的な雑音が聞こえる。よくよく集中すればそれが水の音だということがわかった。
水の音は風呂場の方から聴こえる。京子はトイレに行ったのかと思ったが、どうやらシャワーを浴びているらしかった。京子も汗をかいてしまったのだろうか。
脱衣所の扉をそっと開けると、やはり浴室には明かりがついていた。バスタオルを取り出してきれいにたたみ直し、わかりやすい場所に置いてあげる。京子も一応お客さんだし、この部屋の主としてこういうことくらいはしないといけない。
結衣「京子ー? バスタオルここに置いとくぞ」
シャワーの音で聞こえないのだろうか、返事はしなかった。まあいいかと思って戻ろうとするとき、私は背後に強烈な違和感を覚えた。
結衣「…………」
水の音が、いつまでたっても一定であった。
シャワーを浴びているのだとしたら、身体に当たった水はその部位によって不規則な音を発し、また風呂場の床に落ちる水の音にも当然差異が生まれるはずだった。
しかし今私の耳に届いているシャワー音は、言うなればシャワーを持ってただ床に流しているだけのような、変化のない一定した音だった。
心の中の違和感が、嫌な予感に変わった。風呂場の扉をノックする。
結衣「京子? 大丈夫か?」
……返事がない。相変わらず単調な水の音だけが聞こえる。
そしてふと気づいてしまった。脱衣カゴの中がからっぽだった。当たりを見渡しても特に脱ぎ散らかした服などがない。……京子の脱いだ服がどこにも見当たらない。
結衣「きょ、京子っ!?」
ばんばんばん、と扉を叩く。ここまで返事が無いのはさすがにおかしい。もしかしたら溺れているのかもしれないという不安が一気に高まり、ためらうこともなく風呂場の扉を急いで開けた。
結衣「!!!」
……溺れてはいなかった。
否、そこには誰もいなかった。
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