過去ログ - 【デレマス】オン・ザ・ストリート・コーナー【鎧武】
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37: ◆oZuontUvSM[sage saga]
2015/11/18(水) 15:08:04.89 ID:BKTkan7I0
「たしかにあんな状況で手を出すような変わり者は、そうそういないよな」

上着のジャケットを脱いだザックは、少し苦笑いしながら自嘲した。
さらけ出された腕は、あの頃よりもさらに鍛えられている。

基本的に自業自得がルールのあの場所で、下手な干渉はただ面倒事を増やすだけ。
それでも手を出したのは、やはりザックも変わり者であるからだった。
少女に何の過失もないだろうという推測からか、ザックの拳が守るためのものだったからか、
あるいは少女に自分にない可能性を感じたからか。
他にも理由らしきものはあれど、そもそもザックが平凡な人間だったなら、この出会いはなかった。

「いいじゃないすか。そのおかげでアタシはこうしていられるんだし。
 それに誰かが見ていてくれるって、モチベーション上がるんすよ。
 兄ちゃんがいなかったらアートを始められなかったし、アイドルにもなれてない」

ケラケラ笑う沙紀の笑顔は、あの頃よりも眩しく感じる。
これも変化なのだろうとザックは理解した。
良い笑顔を見せるのは変わらないが、思いも見栄えもよりストレートに、心を打つように見える。

「そいつは嬉しいな。ただ…オレは守るしかできなかった。見守るってのも含めて。
 人を導く指針を見出せるって意味じゃ、オレは沙紀のプロデューサーにはかなわないな」

大学進学を機に街を離れることになったザックが気がかりだったのは、沙紀の活動を見守れないことだった。
沙紀自身の実力もあって、芸術に好意的な夜の仕事の人間の応援は付いていたものの、
それでも色々な面で沙紀の味方になっていた自分が離れれば、また危険が及ぶ可能性もある。
最後にできる限りのことはして、身の安全だけは確保できたが、アーティストとしての成長はもうサポートできない。
その後は不幸にもダンスチームや街のことで手一杯になり、連絡を取る余裕もなかったから、縁は切れたかと感じていた。
だから、大会参加の時に沙紀の名前を見た時は目玉が飛び出るほど驚いたし、すぐに彼女の出ている雑誌も買った。

自分と入れ違いになる形で沙紀を支えた担当プロデューサーに、ザックは恩義を感じると同時に少なからず興味があった。
それは親心のようなものだけでない。


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