44:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:40:02.60 ID:0oXNO4iLo
進学先の高校の近くに親戚が暮らしていることは分かっていた。
だからこそ、そこを選んだという面もある。
お目付け役をつける形なら、話も通ると思ったのだ。本当はそれだけじゃなかったけど。
とはいえ、そもそも下宿と言っても、子供のワガママの為に親戚に迷惑をかけるのは、両親の望むところでもなかった。
そこで手を挙げてくれたのが、大学に通うために一人暮らしをしていた静奈姉。
五歳か六歳だったか、年上の親戚。
子供の頃から従姉弟のように遊んでいて、お互い知らない仲じゃない。
なによりも俺の心情を汲んでくれて、
家賃や諸々の生活費を折半することを条件に、俺がここで暮らすことを許してくれた。
おじさんたちと静奈姉には頭があがらない。
もちろん、実際に俺が払うべき金を出してくれている両親にも、感謝はしている。
そういう状況になってはじめて、うちが世間一般的には、比較的裕福な家庭に属するのだとも知った。
……そういうことの諸々が、俺としては嫌だったんだけど。
「タクミくんさ、何部だっけ?」
寝転がったまま、静奈姉は気の抜けた声でそう訊ねてきた。
「文芸部」
「……文芸部かあ」
何かを思い出すみたいに、彼女はしばらく黙り込んだ。
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