過去ログ - 美希「第一歩なの」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:21:14.94 ID:U3uWc7f60
とある中学校の放課後、学生たちが部活動の準備で慌ただしくなる中、一人の少女は眼を閉じて机に突っ伏し、よだれを垂らしたまま動かないでいた。
机に彼女のよだれが広がっているのを見れば、普通なら誰も近寄ることはない。
それどころか、公共物である机をよだれで汚すのはいじめの対象となりかねない行為だ。
しかし、彼女は中学二年生にして学園のアイドルとしての不動の人気を得ている少女であった。
そのため、いじめを受けるどころか、机に広がったよだれが何者かのハンカチに吸い込まれているのは日常茶飯事であったし、それが裏で高価(とはいっても現在の彼女の人気を顧みればそれは破格と言ってよかった)で取引されているのは公然の秘密となってもいた。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:22:32.61 ID:U3uWc7f60
余談だが、席替えにより彼女のよだれの染みついた机を使用するという幸運を得た男子生徒は誰一人としていなかった。
それは、男女の座る列は固定されていたからという単純な理由だけによるものではない。
言うまでもないことだが、彼女の座っていた机を使用することになった女子生徒は、常に隣の席の男子生徒に机の交換を持ちかけられる。
しかし、女子生徒はそれらの要求を断固として斥けるのであった。


3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:24:08.23 ID:U3uWc7f60
実は、女子生徒たちも彼女のよだれのついた机を使うのは満更でもなかったのである。
というのは、彼女は中学二年とは思えないほどの抜群のプロポーションを持っており、
「彼女の座っていた席につくことで胸が大きくなる」という噂がまことしやかに囁かれていた。
そのため、女子生徒の間でも彼女の座っていた席は人気だったのだ。


4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:25:47.58 ID:U3uWc7f60
ここまで書いてきたように、彼女はたとえ居眠りで机をよだれまみれにしようとも、学園で別格の扱いを受ける、カリスマ性を持った少女だった。
さて、生徒たちの部活動が始まろうとしているとき、給食を食べてから三時間ぶっ続けに眠っていたその少女に一人のクラスメイトが話しかけた。

「ねえ美希、そろそろ起きてよ!」

以下略



5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:27:12.42 ID:U3uWc7f60
「今日はバスケ部に来てくれるって言ったでしょ?」

「バスケ部?ミキ、そんなこと言ったっけ?」

「言ったよ!さあ、早く来て」
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:28:36.44 ID:U3uWc7f60
「ごめんね、またね〜なの」

「美希がバスケ部に入ってくれれば、全国大会に出られるかもしれないのに……」

残念そうにするクラスメイトであったが、これは毎日見られる光景である。
以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:30:05.17 ID:U3uWc7f60
「あふぅ、最近ツマンナイの。部活動も一通りやったし、飽きちゃったなぁ……ひゃっ!」

校舎を出て、欠伸をする美希であったが、その欠伸は肌寒い風にかき消された。

「うう、寒いの。どうして他の人は平気なの?」
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:33:22.36 ID:U3uWc7f60
「ただいまなの……」

誰もいない家に帰ると、美希は出かける準備を始めた。美希は夢中になれることこそ学校にはなかったが、おしゃれをすることが生来好きだった。
美希は、彼女曰く『全然イケてない』制服を忌々しげに脱ぎ捨て、下着姿となった。

以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:37:04.40 ID:U3uWc7f60
「ミキってそんなにスタイル良いのかなぁ。たしかにおっぱいは大きいけど」

美希は鏡を見ながら自分に問うた。
腰まで届くほどの茶色がかった長髪、平均的な身長、華奢と言ってもいい体。
美希は、自分の体はその実、胸の大きさ以外至って平均的であるように感じ、物足りなさを覚えていた。
以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:38:54.86 ID:U3uWc7f60
「う〜ん、どうしようか迷うの」

美希が副都心にある喫茶店で、好物のキャラメルマキアートを飲みつつ、髪の色をどうするか考えていると、隣の席から女性の叫び声が聞こえた。

「かわいすぎるわ!!やっぱり時代は金髪よ、金髪!!」
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:40:22.35 ID:U3uWc7f60
「ねえそこのお姉さん、何してるの?」

「おねえさん!?」

「うん、お姉さん。何で金髪がどうとか言ってたの?」
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:41:49.42 ID:U3uWc7f60
「それで、どうしたの?私に何か用かしら?」

「あのね、ミキが髪の色どうしようかな〜って考えてたら、お姉さんが『金髪がいい』って言うから、なんでなのか聞きに来たの」

「ああ、その話ね。いい?金髪っていうのは、男の子でさえもかわいく見せてしまうのよ。美希ちゃんは音楽家にメンデルスゾーンっていう人がいるのは知ってるかしら?」
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:43:39.30 ID:U3uWc7f60
「ふうん、確かにかわいいと思うな。でも、金髪になったミキの方が凄いよ?」

雑誌を見た美希が自慢げに言うと、小鳥は笑って言った。

「美希ちゃんみたいな若い子が金髪にするのは、早いと思うわよ?」
以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:44:59.92 ID:U3uWc7f60
美希は小鳥をおいて店を出ると、美容室へと向かった。
美希はマイペースな性格ではあったが、同年代の少年少女と同様、やめておけと言われるとやりたくなってしまう天邪鬼な性質も持ち合わせていた。

「それに、こういうのはちょっとしたきっかけで決めるのが一番なの」

以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:46:52.38 ID:U3uWc7f60
「こらっ。学校もあるのに、金髪にしたらだめでしょ?」

「ひゃぁっ!」

美希は後ろからふいに肩をつかまれて、思わず声をあげた。振り向いて小鳥だと確認すると、美希は恨めしそうに小鳥を見つめた。
以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:48:40.54 ID:U3uWc7f60
「ダメよ小鳥、ここは大人としての威厳をしっかり見せないと。」

小鳥は首を小刻みに振ると、きっぱりと言った。

「なおさらいけないわ。ご両親が何て言うか」
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:51:37.99 ID:U3uWc7f60
「美希ちゃん、すごく似合っているわ……」

「ありがとうなの。ミキも、すごくいい感じだって思うな。美容師のお姉さんのおかげだね」

美容師の感嘆を背に、美希はにっこりと笑った。
以下略



18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:53:26.02 ID:U3uWc7f60
美希の髪染めが終わり、店を出た頃には、空は真っ暗になっていた。

「美希ちゃん、もう遅いし、帰った方がいいんじゃない?」

「うん。小鳥、また一緒に遊べる?」
以下略



19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:54:47.60 ID:U3uWc7f60
美希の家族は、彼女の予想通り、驚くほど平然と髪色の変化を受け入れた。両親は美希の髪を受容するばかりか、二人そろって褒めちぎるのであった。

「ミキね、最初はどの色にしようか迷ってたの。でも、小鳥っていうお姉さんが美希の髪の色を決めてくれたんだよ」

美希も嬉しそうに両親に髪の色を変えたきっかけを報告するのであった。
以下略



20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 21:57:05.15 ID:U3uWc7f60
また、学校でも美希の金髪は黙認されるに至った。
黙認こそされていたものの、生徒の間では教員は会議を開いて美希の髪について審議したという噂が流れていた。
しかし、話に尾ひれがついたのか、
「保守的な教頭が反対していたが、一部教員から『美希が机に突っ伏しているときの姿がまるで巨大な金色の毛虫に見え、えもいわれぬ癒しである、これをなくしてしまうのはもったいない』と猛反対され、そのまま押し切られた」
という嘘か本当かも分からない内容になっており、真相は藪の中となってしまっている。
以下略



21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/24(火) 22:01:03.73 ID:U3uWc7f60
「小鳥、久しぶりだね。あと、そこの人、こんにちは」

喫茶店で小鳥に話しかける美希であったが、今回は小鳥のほかにもう一人の女性がいた。
その女性は青と白の縞模様のブラウスにスカートといういでたちで、何よりも目を引くのは眼鏡の奥の大きな瞳であった。
その瞳は聡明そうな印象を与えた。そして、まっすぐに射貫くような視線は思わず身構えてしまう力を持っていた。
以下略



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