13:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:02:45.19 ID:+iT0SMHJo
「それほどに融通の利かないロボットは時代遅れですよ」
彼が胸を張ってそう言うので、本当の最新型のロボットに見えてくる。
「へぇ。プロデューサーさんはいつ生まれたんですか?」
14:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:04:07.27 ID:+iT0SMHJo
ふっと、今までのオーディションで出会った審査員のことが頭に浮かぶ。
苦笑混じりに「今どき、流行らないよ」とか言われるのはいいほうで、
嫌悪感を隠そうともせず「バカじゃないか」と言われたこともある。
「……プロデューサーさんは、私がウサミン星から来たウサミン星人だって、信じてくれるんですよね?」
15:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:05:59.76 ID:+iT0SMHJo
そうしてレッスンが終わったあと、再度スケジュールの確認のため二人で事務所へ向かった。
面接で一度来たことはあったけれど、オフィスに入るのは初めてだったので、少し緊張した。
デスクのパソコンに二人で顔を寄せて、スケジュールの最終確認をした。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:06:36.61 ID:+iT0SMHJo
「あのプロデューサー、やりにくくない?」
「あ、いえ……全然、そんなことはないです。むしろ、似た者同士っていうか……」
「へえ、菜々ちゃんもロボットなの?」
17:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:06:53.10 ID:+iT0SMHJo
「そうです、僕はロボットですよ」
私はスケジュール表を受け取りつつ、クスリと笑った。
「プロデューサーさんって面白いですよね」
18:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:08:02.62 ID:+iT0SMHJo
――――
しばらくするとレッスンにも慣れてきて、ライブで歌う予定の曲の練習も始まった。
基礎練習が嫌いというわけではないけれど、ようやくアイドルらしいレッスンを受けられて、胸の内側で泉が湧くような気持ちがしていた。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:08:45.66 ID:+iT0SMHJo
私がウサミン星人であることを機密にする――つまり、このキャラをやめるということに違いない。
誰がそんなことをプロデューサーさんに言ったのだろう、このあいだ話した隣のデスクの彼だろうか。
「宇宙人であることを隠さず活動している例もありますよ」
20:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:11:39.38 ID:+iT0SMHJo
人生、思い通りにならないことは少なからずある。
少なからずというか、思い通りにならないことばっかりだ。
やっとアイドルとして採用されたけれど、プロダクションは「ウサミン星人のナナ」ではなく「普通の菜々」を見込んでいたらしい。
それは喜ぶべきことかもしれないけれど、私を採用したプロダクションも結局はウサミン星を信じてくれなかった。
21:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:12:45.56 ID:+iT0SMHJo
「菜々、大丈夫? ツラかったら無理して出なくてもいいからね」
私は「平気」と返事をして、制服の袖に腕を通した。
私と彼女は何年も前からこの店で一緒に働いている。
歳は少し(ほんの少しばかり)離れているけれど、気の合う友達だ。
22:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:15:40.36 ID:+iT0SMHJo
「なに? やっと辞めるの?」
「すぐじゃないけど、話だけは先にしておこうと思って」
「やっぱり忙しいんだ。お金は大丈夫?」
23:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:16:16.56 ID:+iT0SMHJo
「まだ決まってない。でも、きっとやるって」
「そっか、決まったら教えてね! ノルマとかあるのかなぁー、とりあえずあたしの分は絶対確保しといてね!」
それから彼女は「よっしゃ!」と気合を入れて、ホールへ出て行った。
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