6:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 16:54:23.10 ID:+iT0SMHJo
私は姿勢を正して「ひとつだけいいですか」と言った。
「月曜日と水曜日と日曜日のレッスンは、時間をずらしてもらっても、いいでしょうか」
「では午前中にレッスンをするということですか?」
7:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 16:55:43.69 ID:+iT0SMHJo
「先ほども説明しましたけど、プロダクションから給料は出ますよ」
「あ、はい……それは、わかってます」
私に支給されるらしい給料の額は高くないけれど、私のような候補生へ出すには恐らく破格の金額だった。
8:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 16:59:38.46 ID:+iT0SMHJo
プロデューサーさんは紙束を鞄にしまった。
あの細密なスケジュールは彼自身が作ったものなのだろう。
それを淡々と説明する彼は、どこか人間的な温かみを拒絶するような雰囲気があった。
スマートで背が高く、整った顔立ちではあるけれど、そのマネキンのような顔がニコリと笑うのは想像しづらい。
9:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:00:09.00 ID:+iT0SMHJo
「改めて、よろしく。ナナさん」
差し出された手を条件反射的に握る――と体温が伝わってくる。
「プロデューサーさんの手、あったかいですけど……」
10:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:01:09.67 ID:+iT0SMHJo
――――
今日から始まったレッスンは、ほとんどスケジュール通りに実行された。
11:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:01:36.24 ID:+iT0SMHJo
前置きもそこそこにいざレッスンを始めると、基礎練習からすでに息が上がってしまった。
今まで自分なりに体力作りはしているつもりだっただけに、少しばかり落ち込んだ。
プロデューサーさんが「では、もう一度」と言いかけるのを制して、私は手を上げた。
12:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:02:02.16 ID:+iT0SMHJo
「そ、それは……わかってるんですけどぉ……」
「すみません、僕のミスです。ナナさんの体力を見誤っていた」
「あ、いや……ナナこそ、ごめんなさい。もっと、しっかりしてたら……」
13:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:02:45.19 ID:+iT0SMHJo
「それほどに融通の利かないロボットは時代遅れですよ」
彼が胸を張ってそう言うので、本当の最新型のロボットに見えてくる。
「へぇ。プロデューサーさんはいつ生まれたんですか?」
14:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:04:07.27 ID:+iT0SMHJo
ふっと、今までのオーディションで出会った審査員のことが頭に浮かぶ。
苦笑混じりに「今どき、流行らないよ」とか言われるのはいいほうで、
嫌悪感を隠そうともせず「バカじゃないか」と言われたこともある。
「……プロデューサーさんは、私がウサミン星から来たウサミン星人だって、信じてくれるんですよね?」
15:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:05:59.76 ID:+iT0SMHJo
そうしてレッスンが終わったあと、再度スケジュールの確認のため二人で事務所へ向かった。
面接で一度来たことはあったけれど、オフィスに入るのは初めてだったので、少し緊張した。
デスクのパソコンに二人で顔を寄せて、スケジュールの最終確認をした。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 17:06:36.61 ID:+iT0SMHJo
「あのプロデューサー、やりにくくない?」
「あ、いえ……全然、そんなことはないです。むしろ、似た者同士っていうか……」
「へえ、菜々ちゃんもロボットなの?」
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