過去ログ - 晶葉「どうにも私は、恋をしているらしい」
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◆zefPw5mKfA
[saga]
2015/11/27(金) 00:22:25.88 ID:NjB6h2Aj0
当時の私といえば、発明品を思うままに作り続けるだけの、可愛げのない女の子だった。
父が発明家で、私もそれに倣って同じ道に入り、そして敵うだけの才覚を発揮していっただけだ。
父という存在は常に私の手本で、私の道の先に立つ人で、私の壁だった。
だから私はその壁を越える事を、父に認められようと躍起になっていたんだ。
その結果、当然の事ながら人との繋がりに対して割く時間はなかったし、必要も感じなかった。
特に同世代の人達などは、私のしている事を理解する事すらできないのだから尚の事だ。
そうして気付くと私はいつも一人で、発明品を作る事だけを繰り返していたのだ。
それで十分だった。とは思っていない。
人並みに世界に対する好奇心もあったし、液晶の向こうに映る輝きを美しいとも思っていた。
だが、それについて考える時間もなかったし、何より――
「住む世界が違う……と、そう考えていたんだ」
「そーよねー。あれだけ色々作ったり出来るのなら、わざわざアイドルになる必要ってないわけだし」
「い、いちいち言葉が鋭かよ、心しゃん!」
「いや、その通りだ。彼と出会わなければ私は、きっと一介の発明家としての道を歩んでいたと思う」
心の言っている事はその通りで、私は私の力だけではきっと変わらなかっただろうという確信がある。
父を追い、いつか世界に轟く大発明をするために、それだけの為に生涯を捧げるような人間を貫いただろう。
「それが変わったのが、あの日の彼との出会いだったんだ」
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