478: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/04/25(月) 23:24:46.77 ID:FN+t7kdx0
(……冷えてきたな)
不意に、黙々と動かしていた足を止める
汗で湿っていた体はすっかりと乾き、大きく開いたシャツの胸元から入り込む夜風が体の熱を奪っていく
ミサイルの搬出を無事に終えてから数十分、ひとり真夜中の基地を歩いてきた
他の兵科の面々は休息のために宿舎へと帰っていったが どうにもすぐに休む気になれずにこんなことをしていた
気が付けば、港に併設された倉庫群を抜けて岸壁の終わりというところまで来ていた
ここまで来ると波止場の喧騒は嘘のように静まり、さざ波と風のうなりだけが時折り静寂を破るのみだった
(出撃まであと2時間か……)
護岸の向こうに広がる海は黒々として底が知れない
そんな海を眺めていると、今まで頼りにしてきたガス灯の光がひどく弱々しいものに感じられる
同時に、この海の向こうで消息を絶った彼女の顔がまぶたに浮かび、再び嫌な想像が頭を支配する
軽く頭を振って嫌な考えを吹き飛ばす
(考え過ぎだな。もう休んで出撃に備えよう)
そう自分に言い聞かせながら、踵を返して波止場の方を向く
足早に宿舎へ戻ろうと片足を踏み出そうとしたとき、波音の合間に誰かの足音が近づいてくるのが聞こえた
こんな時間にこんな場所まで来るに人間を不審に思いながら、その人物がやってくるのをを待つ
そんなものを待っているよりさっさと宿舎へ戻るべきなのは分かっているが、何故だが動けずにその場で留まっていた
しばらくすると、黄白色のガス灯に照らされた短靴が目に入り、足音の主が姿を現した
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