601: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/09/24(土) 21:23:51.84 ID:tZaL5E9A0
小林は一瞬戸惑った表情を見せるが、直ぐに目の前の計器を慌ただしく操作し始めた
「カッターは後回しでもいい」
「とにかく右舷の錨を下ろさせるんだ!」
その後ろ姿に、井上は付け加えるように指示を繰り出す
「まさか、お前……」
ここに来てようやくこの男がやろうとしていることが分かってきた
いきなりの投錨命令とアンカーワイヤの切断を想定したチェーンカッターの携行指令
この2つから導き出される答えはただ1つ
錨の抵抗力を利用した右舷側への急速回頭、それしか考えられなかった
「ええ、そうです」
彼も上官が自分の考えに思い至ったことには気づいているだろう
しかし、井上はただ肯定の返事を返すのみで、あっけらかんとしている
確かに主砲が旋回できないのなら船体の方を回頭させれば良いというのはわかる
だが、それは……
「……かなりの大博打だぞ」
彼の考えに対する率直な感想が言葉に出ていた
だが、それは井上にとっても分かりきっていることでもあったのだろう
顔色ひとつ変えずに『これしかありません』と言ってのけた
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