32:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:15:27.19 ID:bauBs7zr0
何故か響は、かっぷめんの上蓋を再び閉ざす愚かな行いを。
さも当たり前だという様に澄ました響の表情が、わたくしには信じられません。
そしてなお、響は残酷に。
33:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:16:01.90 ID:bauBs7zr0
「もうそろそろ」
「まだ一分」
「一分も三分も変わりなく」
34:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:16:30.39 ID:bauBs7zr0
「わたくしは龍です」
「うん」
「気の遠くなる様な時を生き永らえてきたわたくしにとって分という単位はあまりにも脆く」
35:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:16:57.26 ID:bauBs7zr0
「うわあん、あうあうあう!!」
「泣かなくても」
「本能が、本能が呼んでいるのです」
36:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:17:26.06 ID:bauBs7zr0
何故命有るものは、神々しさの前に従順になるのでしょうか。
人は神を崇め、跪き、拝み伏すと云いますが、それは龍とて同じなのかもしれません。
現に今、わたくしはかっぷめんなるものに信心を覚えようと云々。
龍に礼儀というものがあるならば、今のわたくしは正に師範。
37:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:17:53.27 ID:bauBs7zr0
「どう?」
「響」
やはり得意げににやつく響に対して、わたくしは。
38:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:18:22.07 ID:bauBs7zr0
思えば恥も忘れ去って、わたくしは母親のくちばしを待つ雛鳥の様に。
親鳥役の響も、まんざらでもない様子です。
この際「ぴぃぴぃ」と鳴いてみるのもありなのでは。面妖な思い付きに喉が動きそうになりながら。
そんな滑稽な姿を見せながら、わたくしは願いました。
39:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:19:05.61 ID:bauBs7zr0
空が澄み渡り、穏やかな風の吹く春の日でした。
「本当に行ってしまうのですね」
「うん」
40:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:19:31.75 ID:bauBs7zr0
わたくしには『てれび』も『すてぇじ』も分かりません。
しかし、その楽しげな歌や踊りを見ているだけで、わたくしもつい笑みが零れました。
その時の響はというと決まって、太陽の様な笑顔をわたくしに見せるのです。
そんな響を見る度に、わたくしは喜びの裏で、一抹の寂しさを感じていたのです。
41:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 15:19:57.33 ID:bauBs7zr0
残された時間を少しでも永く、そして楽しく。わたくし達は過ごしたつもりです。
響の持ち寄る物はいつも面妖で、またわたくしの昔話はたいそう珍妙で。
声が枯れ果てるまで、笑い合ったことだってありました。
時には仲違いもあり、お互いに牙を向け合うことだって。
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