過去ログ - 【悪魔のリドル】春紀「あれから」
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55: ◆UwPavr4O3k[saga]
2016/05/03(火) 09:16:07.95 ID:xesjNZZs0
晴「……信じてるから。兎角の事。」
ぐっと引き寄せられた肩に顔を埋めて来た晴をそっと抱きしめる。
言うべき事は伝えたと、何度か頭を撫でると優しく押し返してアパートを後にする。
既に外は宵闇に包まれ、視界もかなり悪くなった。
少しだけ、夜目に慣れる様に意識を切り替え、左腕の調子を確かめる様に動かした。
その時、視界の端で何かが蠢いたのを見逃さなかった。
晴を巻き込む訳にはいかないと、出来る限り遠くの方へと駆け出していく。
逃げ出した先には気配は無く、一時的に突き放したモノだと確信していた。
筈だった。
自分の左肩にナイフの切っ先が通った時、完全に兎角は相手を見失う。
兎角「っづ……!?」
「東のアズマ。確かに、私が聞いていた噂通りの見目麗しい女の子」
兎角「……」
「でも、私、ケダモノはあまり得意ではないの」
周囲が開けた暗闇の小さな公園で、決して浅くは無い左肩の切り傷から伝う生暖かい血の感触。
暗闇のせいか、余計に感覚が鋭敏になっている筈の兎角ですら気付く事が難しい相手。
曰く、その女は"曲芸"を得意としている。
「ここで殺すわ、貴女のこと」
それは真上。
周囲一帯の住宅や木々に張り巡らされた極細のワイヤーに逆さまにぶら下がったピエロの顔が兎角の眼前に現れる。
目を見開いた兎角へとナイフの斬撃が襲い掛かり、驚異的な反射神経から右手のナイフでそれを受ける。
が、受け止めきれない刃が的確に兎角の傷跡を抉るように走り、止血した個所から血が溢れる。
その痛みは、思わず兎角が片膝を突く程。
兎角「ッ……お、前。誰だ」
「あら。暗殺者に自己紹介を求めるの?」
身長は目測で170前後。女性にしては相当高い方と見えるその長身の女を睨み付ける兎角に、ピエロ顔の奥の瞳が嗤う。
氷影「日月氷影。貴女が最後に覚える名前」
片膝を突く兎角に、その兎角自身の血で濡れたナイフをスカーフで拭い取る氷影。
兎角は近付いてくるこの女に、これまで生きて来た中でも"最も"と言っても良い恐怖に似た痺れを感じた。
サイコパスや吸血鬼なんて化物には持ち得ない、"暗殺者"としての純粋な狂気が、この女からは漂う。
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