過去ログ - 【悪魔のリドル】春紀「あれから」
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59: ◆UwPavr4O3k[saga]
2016/05/12(木) 15:23:23.28 ID:/jhDhGz80
一方的になるかと思われた勝負は、しかし、思った以上の兎角の抵抗に氷影の表情が少しだけ変わる。
水準よりも遥かに優れた血筋の力は、やはり侮れない。
氷影「(自分としては、完全に見えない角度から斬りかかってるつもりだけど)」
死角というモノは、必ずどの生物にも存在し、360度全方位が見渡せるバケモノが仮にこの世に居るとすれば………
"仮定"するなら、第六感。
本来存在しえない筈の超直感という名の本能的な感知センサーの様なモノが働いていることだろう。
ならば、目の前の薄暗く満足に体も動かせない状況の中で、的確とは言えぬものの徐々に正確にナイフを弾く生物は何者だ。
兎角「ッ!!!」
氷影「(……化物。確かに、理事長の言葉も分からない事は無いわ)」
ミョウジョウ学園の理事長でさえも、評価に値する二人の少女。
東と葛葉という二つの因縁。
氷影「……ふふ。頑張っている貴女に少しだけ聞きたいことがあるの。」
兎角「知るか」
氷影「何故、貴女は"走り鳰"にこだわるの? 寒河江春紀という、貴女からして見れば"敵"が救った彼女を」
兎角「………」
氷影「少なくとも、殺し殺される様な因縁は強い筈よ。私達の一つ前の黒組、十年黒組の事はよく知ってるわ」
兎角「自分のケジメだ。それ以上でも、以下でもない」
完全に気配を消した死角からの斬撃の筈なのに、兎角の頭はどんどん冴え渡っていく。
自分でも分からない。失血も激しく、既にフラフラだったはずの手足は正確に動き、痛む傷痕も麻痺したように痛みを感じない。
単純にアドレナリンが溢れているというだけでは説明しきれない。そんな不思議な力が湧き上がる。
氷影「……そう。」
"東兎角"という存在にとって、今の"走り鳰"はあくまでも一之瀬晴という少女の為の依代。
そう思っていたが、それ以上に何かがあるらしい。
これ以上はいずれ自分の位置が割れてしまうだろうと思った氷影は、あまり好んでいない拳銃を引き抜く。
消音器付のワルサーという拳銃、亜音速で死角から飛来する複数の弾丸は、確実に兎角を貫いた。
放たれた弾丸は五発。氷影の私的な意向で、装填していたのはその五発のみ。
右脚、左腕、右肩、左足……そして、ナイフを握る右手。
右脚、左腕―――――――二発が血の華を咲かせ、兎角の両膝がガクリと力を失う。
左腕は元々重傷だった為か、添え木の間から特に多くの血が流れていく。
そう、"ただの二発しか"、当たらなかった。
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