25: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 17:42:36.33 ID:d/9JR/ulo
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「文香、君は活動の最後の方、明らかにやる気をなくしていた。
その原因は、俺のプロデュース方針が迷走したのもあったろうが、
『アイドルなんてやらず、きちんと大学へ通ってればよかった』と思ったからじゃないか」
文香は、芸能人として商業的には成功を収めていた。
だから、それからくる多忙さやなんやらのせいで、学業に支障があったはずだ。
「引退してからだって、例えば文筆業やるとか、出版社に勤めるとか、そういう転身だったら、
『元アイドル・女優』ってレッテルが役立ったはずだが……」
しかし文香は、文学を究めるため大学へ戻った。
芸能活動で得た知名度が、無用の長物どころか足枷になりかねない分野だ。
「俺は、文香の才能を使い倒して、一時の美味しい成功だけもらって、
そのために文香が本当にやりたかったことを、邪魔してしまったんじゃないか」
俺は今、とても情けない顔をしている。
それが、鏡も無いのに分かった。
「俺があの時、文香に声をかけたのは……文香のために、ならなかったんじゃないか、って」
行燈のぼやけた明かりが、有り難かった。
もし部屋が薄暗くなかったら、もっと酷い様を文香の目に晒していたから。
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