5:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[sage saga]
2016/01/17(日) 02:02:12.50 ID:wgBKFXiq0
3、
そして、そのすぐ後に……俺とあの子のストーリーはついに動き出すことになった。
事の発端は、メイク体験をした数日後のことだった。
携帯に1通のメール連絡が入った。
「これから会えないか」という旨が丁寧に書かれた上品なメール。
送り主は名も知れぬあの子だと言うことくらいはすぐに分かった。
俺はどうでもいい自分の予定を全て取りやめて、時間や場所を確認する返信をする。
決まった場所は……先日出会ったメイクさんの居る場所の近くにある喫茶店になった。
俺が約束の場所に着いた時には、既にその子は待っていた。
俺は店員に待ち合わせだと伝え、その子の目の前に座った。
相手は少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに会釈をしてくれた。
店員はすぐにメニューを持ってくる。
俺は開かずすぐに出来そうなアイスティーを頼んだ。
そして、届いたアイスティーを、一口、喉を湿らせて……
「連絡ありがとう。……用件を伺ってもいいかな?」
緊張感が伝わらないように出来る限り優しく語りかける。
そこから、その子から紡がれた言葉は……俺を掻き乱した。
正確に思い出すことは出来ない。ただ、言われたことは……
メイク体験や髪型を変えて可愛い自分に出会えたことは恥ずかしかったけど、少しだけ嬉しかった。
ということと……その子が『男』だということだった。
震えそうな手や声を悟られないように相手の言葉を聞く。
その子……輿水幸(こしみずこう)は、小さいときから親以外の周りから可愛いとだけ言われてきた。
ただ、自分は男だし、それを認めたくなかった。
でも、先日、メイクのときに見た俺の嬉しそうな顔と可愛いと褒めた声は今までと違っていた。
心地よくて、嫌いな評価なのに嬉しい気持ちを感じた。
プロデューサーさんになら可愛いと言われても悪くない気分なんだ……と、そして、
アイドルになるというのは、きっと女の子としてのアイドルだとメイクを見て確信している。
そこまで言うと……彼は黙ってしまった。
いや、黙ったんじゃない。待っているんだ。俺の声を……
俺は……精いっぱいのカミングアウトと、その言葉に含まれているモノを感じとって言葉を絞り出した。
無我夢中で性格な言葉なんて覚えてないけど、確かに伝えた。
本気で可愛いと思ったこと、女の子のアイドルとして輝く姿が見たいと、そして…そのプロデュースを俺自身でやりたいと。
彼は、静かに聴いていた。
そして……静かにでも確かに首を縦に振った。
俺は、どう考えていいのか分からなかった。でもプロデュースしたい気持ちは本気だった。
その後、詳細は連絡すると告げて別れ……俺はメイクさんの場所を目指して歩いた。
メイクさんは、俺の顔を見て察知したように人払いをして話す時間を作ってくれた。
俺は……さっきのことを告げ、それ(男)でも可愛いアイドルとしてプロデュースしたいと願いを口にした。
答えは、その願いを叶える協力をしてくれるという力強い一言だった。
ここから、プロデュースが始まった。
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