10:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 05:15:48.43 ID:/p0Ll9udO
遠くにパン工場の煙突が見えて、見慣れた赤い屋根も見えてきた。
僕は一目散に飛んでいきたかったけど、なんでそうしたいのか分からなかったから、ゆっくりと飛んだ。
そして、バタコさんとメロンパンナちゃんが植えた花壇を見ながら、パン工場の扉の前に着地する。
花はいつも通り綺麗に咲いているのに、僕はその花を綺麗だと思えなかった。
少しためらって、僕はゆっくりとパン工場の扉を開ける。
「ただいま」
すると、中ではバタコさんとチーズが部屋の掃除をしていた。
「あら、早かったわね。なにかあったの?」
「いえ……ジャムおじさんは出掛けてるんですか?」
「ううん。アンパンマン号の整備をしているはずだけど」
「そうですか……」
僕はまだ落ち着かずに、パン工場の入り口で立ち止まっていた。
そんな様子を見て、バタコさんは心配そうに僕を見る。
「やっぱりなにか変よ。具合でも悪いの?」
「い、いえ、違うんです。なんだかジャムおじさんと話したくなって」
「それなら、話してきた方がいいわね。
お部屋の掃除は、私とチーズに任せて!」
「アンアーン!」
バタコさんとチーズは元気よく笑ったが、僕を歯切れの悪い言葉でバタコさんに話しかける。
「でも……ジャムおじさん、忙しいですよね、きっと……」
「なにも気にすることはないわよ。私たちは家族なんだから」
「家族……。そうですね、ありがとうバタコさん」
「いーえ。戻ってきたらアンパンマンも掃除のお手伝いをお願いするわね」
「はい!」
僕は気がつくと笑っていて、おかしいけど少しほっとした。
そして、車庫の方へと歩きながら、僕は少しずつ心の温かさを取り戻す。
たどり着いた車庫では、僕の名前がついた車を整備している、ジャムおじさんがいた。
58Res/91.13 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。