11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/02/10(水) 05:16:58.47 ID:/p0Ll9udO
「お帰り、アンパンマン」
ジャムおじさんは僕を見て、手を止めて笑ってくれた。
なぜかは分からないけど、僕はものすごくほっとして、泣いてしまいそうになった。
「なにかあったんだね。そこに座って話そうか」
ジャムおじさんが指差した先には、ひっくり返したコンテナが二つ並んでいた。
僕は青い方に腰かけて、ジャムおじさんは向かいの黄色いコンテナへ腰かけた。
「ちびぞう君は元気だったかい?」
「ええ。僕と話したあとは、元気に笑ってくれました」
「そうかい。じゃあ、ちびぞう君からなにか辛いことを聞いてしまったのかな」
「辛いことと言うか、怖い話を聞きました」
「怖い話?」
「はい。ちびぞう君はお母さんの本を読んでしまったようで」
僕はちびぞう君から聞いた、恐ろしい話を少しずつ話した。
ジャムおじさんはとても真剣に僕の話を聞いていた。
「そして、ちびぞう君が言うんです。……その、ばいきんまんは僕を殺そうとしているんじゃないかって……」
胸の音がドキドキと強くなって、かすかに痛みも感じる。
僕はまだ、ちびぞう君の泣き声が聞こえているような気がした。
頭の中の黒いモヤモヤとしたものが、形を変えて僕に突き刺さろうとしているような、そんな気分だった。
しかし、ジャムおじさんは笑って否定した。
「ばいきんまんはそんなことはしないよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。ばいきんまんはアンパンマンをやっつけたいだけだからね。
それはそれで、困ってしまうけど」
苦笑いを浮かべるジャムおじさんの顔は、嘘をついているようには見えなかった。
僕は安心してふーっと息を吐き出した。
でも、まだ心には黒いモヤモヤが残っていた。
58Res/91.13 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。