過去ログ - ジャムおじさんの息子
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34:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 06:08:30.55 ID:/p0Ll9udO


「私たちって、アンパンマンのことなにも知らないのかもしれないわね」

「えっ?」

「パン工場のみんなも、私たちにはなにも話してくれなかったの。
ただ真剣で不安そうな顔で、アンパンマンを見かけたら教えてくれって言われたわ。
ああ、パン工場でなにか起こってるんだなって、私たちはすぐに分かった」

「違うんです。僕が間違ったことをしたからこんなことになってしまったんです」

「アンパンマン、自分を責めるのはやめなさい」


でかこ母さんは真剣な顔をして、迫力のある声で僕に言った。
けれど、その声に僕を責める響きはなかった。


「大丈夫よ。アンパンマンが優しいってことは、みんなが知ってる。
そんな優しいアンパンマンが、力で私たちを助けてくれていることも知ってる。
私たちはそれに甘えてばかりだったけど、今はみんなが思ってるわ。
あなたを助けてあげたいって、みんなが思っている」


僕は心の温かさを取り戻していくようだった。
このままだと僕は泣いてしまうのかな、と思った。
しかし、僕は温かさを切り裂くようなドアのノックの音を聞いた。


「はーい、どちらさま?」


でかこ母さんは明るい調子で扉を開ける。
扉の外から聞こえたのは、ある聞き慣れた声だった。


「アンパンマンがこちらにいるとうかがいました」


その声は固く冷たく、まるで僕の知らない人のような声だった。
でも、間違いなくジャムおじさんの声だった。
あのパン工場にいた男の人とも似ていたけど、僕にはジャムおじさんの声だと分かってしまった。


「あら、アンパンマンはウチにはいませんけど。
どなたからそんな話を聞いたのでしょう?」

「パン工場を訪ねてきた旅人から聞きました。
この家にアンパンマンが運ばれていくのを見たようです」

「それは見間違いじゃないでしょうか?ウチには私とちびぞうしかいませんよ」


少し間を置いて、ジャムおじさんの暗い声が響く。


「アンパンマンが、私に会いたくないと言っているのですか?」

「えっ?」

「違うなら、アンパンマンに会わせて下さい。
話さなければいけないことがあるのです」


すると、ジャムおじさんは制止を振り切って僕の方へ向かってくるようだった。
僕はなにも考えられずに、頭が真っ白になった。
そして、寝室の扉が開く音がした。


「アンパンマン……」


僕が一瞬見てしまったジャムおじさんの顔は、今にも泣きそうな辛そうな顔だった。
しかし、急激に色を失って灰色になっていく。
僕は自分が一気に縮んだような気がして、一気に大きくなるような気がした。


「ジャムおじさん……!」


僕はジャムおじさんへ殴りかかった。


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