過去ログ - グラハム「私は……かつて、マスターと呼ばれたこともある男だ」
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1: ◆FnwJR8ZMh2[sage saga]
2016/02/27(土) 01:37:55.54 ID:onPnK7Ug0

 
――西暦2312年――

――――


 けたたましいサイレンの音で、目を覚ます。
 見慣れた殺風景な個室の中、非現実的なディスプレイの草原でそよ風がのんきに若草をなびかせている。
 ゆっくりと重い身体を持ち上げる、血潮とともに意識は抜身の鋭さを取り戻していく。
 盲た右目が疼いた。失った右腕が、鈍く痛むのを感じた。
 また、戦いが始まる。


「艦長、状況報告を」

『! お目覚めですか、ミスター』

「敵襲か?」

『哨戒に引っかかったようです。このルートは定期コースから外れていたはずなのですが……』

「張られていたか」

『脚が速い奴が混じっています。どっちの奴かはまだ不明ですが、その可能性は高いかと』


 私が出る、そう一言告げて部屋を飛び出した。
 無重力の廊下を、突き出たガイドレールに捕まり泳いでいく。
 途中、透明なガラスを挟んで宇宙の景色に飛び込んだ。
 昔は、0Gの感触にさえ文句を垂れていたというのに。
 今はまだ穏やかなその風景に、混沌をもたらしに行く自分が、酷く汚らしく思えて見えた。


ネフェル「あぁ、来た!」

イェーガン「おはようございます、隊長!」

「状況は?」

ネフェル「アヘッド1、ジンクス2、RGMが3。【アロウズ】の任務遂行部隊だね」

イェーガン「RGMは全体的な速度からVのC型と予想されます。デブリを避ける機動から、恐らくは生ですね」

「SFSを用いずに追ってきたか……母艦が近いか、支援機が待機しているな」

「マスラオはどうだ?」

ネフェル「本体はほぼ仕上がってるってさ。出るんかい?」

「無論だ。時間がない、真っ向から叩いて潰す」

「ネフェルは右後方から火砲支援。イェーガンは私の後ろにつけ、背中は任せる」

ネフェル「何時も通り、ってことね。りょーかい」

イェーガン「隊長が出るぞ! ハッチ開け!」

『戦果を期待します、ミスター』

「安全運行で頼む、艦長。【彼女】はまだ夢の中だ」

『仰せのままに、従者殿(Mr.サーヴァント)』


 着の身着のまま、コクピットへとこの身を投じる。
 締まったシートに背をあてがえば、瞬く間に情報がモニターを埋め尽くし、照らしあげていった。
 また、戦いが始まる。
 操縦桿を握る両の腕、各々違う感触に心が乾いていった。


「マスラオ、【ニ刃型】で出る! 換装!」






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