過去ログ - 【凡将伝】どこかの誰かの話【三次創作】
1- 20
903:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga sage]
2017/11/28(火) 00:04:10.99 ID:Ai2FHL2oo
肌を重ねた青年。その発想は正直正気を疑うもの。だが勝機を窺うもの。その想定は多岐にわたり、禁忌はない。
なんとなれば、天が堕ちることすら想定内なのである。
杞憂。それを憂うのが紀家というのだろうか。

だから、問う。そして混濁。それほどの衝撃。
なんとなれば、漢朝崩壊すら思考遊戯であるなぞ。

「そりゃそうなったら各地で自治が進むでしょうねえ。
 でもでも。それができるとは思いませんが」
「そりゃそうだろう」

思考実験であっても。漢朝崩壊についてここまで狼狽えないものかと張勲は目の前の青年に対する評価を引き上げる。

「だって、そんなの。どうしようもないじゃないですか」
「それでも、人は生きていかないといけないじゃないか。
 お腹がすいたら、食べる。これは大切なことだぞ」

揺るがないその心。
そして張勲は理解する。理解してしまった。
ひたすらに食料増産に心血を注いでいた紀霊という青年の絶望を。
そこにしか光明を見出せなかった袁家という在り方に。

「つまり、世は、乱れると?」
「ないって」

うんざりとした表情で言質を避ける。つまりそういうことなのであろう。

そこからの思考実験は実に……実に刺激的なものであった。

そして辿り着いたのは袁家の敗北。それも完膚なきほどのもの。
それが青年の呻きであり、かけがえのない本音である。

だからこそ。張勲は動くのだ。
幾多の思考実験において勝者を問う。答え合わせをする。

「漢朝の権威が低下し、地方で乱が起きたとします。
 漢軍がその乱を治めることが出来ない。 
 ここまでが二郎さんの唱える前提です。
 だったらそこから誰に美羽様を託すべきですか?」

「そら華琳だろ」

張勲は笑みを浮かべる。その笑みは軽いままに。

そして逃避先は決めた。

盤石と見える袁家だが、そういう時こそ残すべきである。逃避先は。

常識的に考えればありえない。だからこそそうする。

「え、マジか。華琳とこ行っちゃったの?
 これまずくないか?」

功臣の流出に動揺する紀霊に張勲は笑みを薄く。

「まずいですねー。ちょっとこれはいけません。
 ということで、二郎さん、なんとかしてくださいね」
「いや知らんし。知らんし。
 美羽様は守るけど七乃が糾弾されるのは妥当じゃんか」
「もう、冷たいなあ。あんなにも熱く求めてくれたくせにー。
 よ、この冷血漢!恨むぞ!」
「だから関係ないじゃんってばよ!お前俺を巻き込むのええかげんにせえよ!」

それまで喧々諤々としていた張勲がぴたりと言を止める。

「そんな、ひどい……」

ぐす、と涙ぐむ。

「でも、いいんです。美羽様は私が守りますから。
 紀家については巻き込んだことに陳謝を」
「え、いや、その。おい」
「奇縁ではありました。本来袁家貴下の武家。それも紀家と張家が交わるなぞありえないことでした。
 一緒にいて、いれて、楽しかったです。
 一緒に、美羽様と遊んで、楽しかったんだったって思いました」
「七乃?いや、あのな?」

その慌てように、張勲は満足する。
そして、確信する。逃避先としては曹操が一番なのだろうと。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/812.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice