470: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/10(水) 22:43:16.31 ID:xQt0KHc3O
だが亜人の生命と違い、銃弾の数には上限がある。永井を殺し続けるための銃弾も、“かれら”との戦闘でかなりの数を消費していた。麻酔銃の有効射程までまだ距離があり、隊員は前進を続けなければならなかった。彼は万全を期すため、自動小銃のリロードを行うことにした。片膝を落とすと同時に左手で予備の弾倉を掴み、装着してあった弾倉を外し、弾倉交換を完了させる。ふたたび照準を永井の頭部に合わせて引き金を引く。一連の動作の合計時間は三秒といったところだった。そのあいだ、身を潜めている狙撃者が連続的に永井を殺害していた。射線が一方向に集中したせいで、永井の頭の位置が左斜め下に傾いた。胡桃は覚悟を決めた。
クラウチングスタートの体勢でいた胡桃が、猫のように跳び上がった。車の陰から跳び出て、永井の右足首を握力の限り掴み、思いっきり引きずる。アスファルトに赤い一筆線が引かれ、血のなかに砕けた頭蓋骨の破片が残される。直後、永井の頭があった地点の地面が割れた。
永井はまだ射線に晒されたままだった。肉の塊をめいいっぱい引き寄せたせいで、胡桃は尻もちをついてしまった。弾倉交換を終えた隊員が、自動小銃を斜めに傾けボルトリリースレバーを引こうとする。狙撃者は、胡桃の動きを牽制しようと、大まかな狙いのまま撃ち続ける。そのうちの一発が永井の肩に当たる。三秒が過ぎようとしている。
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