509: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:06:00.91 ID:jS9uIrpkO
−−学園生活部
由紀「……」
美紀「……」
由紀と美紀は、どちらも無言のまま部室の掃除をつづけていた。もともとは生徒会室として利用されていたその部屋は、壁や備え付けの備品に焦げ跡をあったりガラスが割れたりしていたが、それ以外には目立った損傷もなく、わずかに鼻をつく煙のにおいが部屋に染みついていたものの、充分に行き届いた掃除と補修さえおこなえば、また部屋として利用可能な状態だった。唯一取り返しがつかなかったのは、生徒会室の表札の上にセロテープで貼られた、学園生活部と黒マジックで書かれた白いコピー用紙だった。紙の面積の半分以上が炎にのまれ、もともとあった「学園生活部」の文字は「学園」と「生」の三文字しかのこっていない。
雑巾で机を拭きおわったあと、由紀はつぎにきれいにするものをまだ発見できないでいた。ふと目線を下げると、ボールがひとつ床に転がっているのが目に入った。
由紀「あった」
その言い方は、ボールがこの部屋にあったことが、まるで予想外の出来事のような発声の仕方だった。部屋からしてみれば、なくなったものもあれば、なくなってないものもあるというだけのことだった。
美紀「あ、運動会の」
由紀「うん」
床からボールを拾いあげ、表面にまぶされた煤を雑巾で拭き取っていく。ボールを補強しているガムテープをはいでしまわないよう、目張りにそって手を動かす。煤がとれ、白い表面が露出したところで、由紀はボールになにかの跡がついているのを見つけた。それは犬の歯型で、サイズからいって子犬が歯をあてたものと思えた。
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