過去ログ - 杏「夜が告げる」
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11:名無しNIPPER[saga]
2016/03/22(火) 01:15:44.52 ID:w8NWr5C/0






命がどーこーするような病気のくせに、彼の退院はとてもはやかった。
あの眉毛の繋がったお医者様とどんな相談をしたのか知らないけど、多分彼は延命とかそういうのが性に合わなかったんだろうし、病院で過ごすよりは家に帰りたかったんだろう。
そして、それが許されたのはもう取り返しのつかないことだから、というのは分かってしまう。……分かりたくないなぁ。

勿論そうはいっても病院通いは続けなければならないらしく、彼は週に何度も検査やお薬を貰いに行っている。
ただ、それ以外に外出することはほとんどしなくなった。
出るのは精々ご飯の買い物を一緒にしにいくとかそれくらいで、杏達は二人ずっと家の中でぐうたらしてた。
そうは言っても、彼はたまに何処かにメールを送っていたり電話をかけていたりと忙しそうにする時があって、相変わらずなとこは相変わらずだったけれど。


「プロデューサーってさ、死ぬ前にしたいこととかないの?」


彼に質問を投げかける。
このままじゃ彼は本当にお仕事しながら死ぬか、杏と眠ったまま死ぬかの二択しかない。
だからこれはちょっとした善意の言葉だった。
というか杏だって一応彼のお嫁さんで妻で奥さんだ。お婿さんで夫で主人のためには何かしてあげたい。
そんな気持ちなんていっぱいあって、なんなら自分の中の特産品として売れるくらいには持て余してる。

死ぬ前にしたいこと、彼はまるで今やっとその問題に辿り着いたというように目を丸くした後、真剣な表情で考え込みだした。
重そうな頭を支える片腕を見て、心なしか前よりも細くなったなって思う。後で飴をおすそ分けしてあげとこう。


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