84: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:54:16.85 ID:vxIFxQsM0
P「頼むから、もう少し用心してくれ」
のあ「善処するわ」
口ではそう言いながら、知らん顔で彼女はグラスを傾けた。
85: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:55:12.87 ID:vxIFxQsM0
のあ「……昨日、卯月に、尋ねたの」
のあ「私は、貴女に近付けたのかしら、と」
のあ「すると彼女は、とっくに追い越していると答えたわ」
86: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:55:59.93 ID:vxIFxQsM0
のあ「そこで、ようやく気付かされたわ」
のあ「私が、卯月の背中ばかりを見て、アイドルをしていたことを」
のあ「信頼できる仲間に囲まれて、日々お互いを高め合いながら、それでもどこかで彼女に追い縋っていたことを」
87: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:57:16.72 ID:vxIFxQsM0
彼女の内側を、はじめて見ることができたと思う。
どうしてだか俺は、プロデューサーとして、一人の友人として、彼女の苦しみや想いに対して、真摯に向き合えることが、嬉しくて仕方ない。
88: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:57:58.02 ID:vxIFxQsM0
P「卯月な。お前のお陰で、また夢が見つかったって言って、喜んでいたんだ」
P「学校の先生になるんだとさ」
そう言いながら俺は、卯月の顔を思い浮かべる。
89: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:59:18.54 ID:vxIFxQsM0
P「お前の歌を聴くと、元気が出るんだそうだ」
ちらりと窺った彼女の瞳に、涙がたたえられているような気がした。
90: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:59:56.01 ID:vxIFxQsM0
短くはない期間にわたってこの仕事を続けてきて、確信を持っていえることがある。
アイドルというものに貴賤は存在しない、ということだ。
91: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 04:01:39.23 ID:vxIFxQsM0
P「なあ」
のあ「……なにかしら」
P「アイドル、楽しいか」
92: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 04:02:59.09 ID:vxIFxQsM0
高峯のあが如何にしてアイドルを目指すようになったかを、なんとか説明し終えると、卯月は、かなり混乱しているようだった。
卯月「のあさん……わたしのことを、そう思ってくれていたなんて、」
93: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 04:04:12.39 ID:vxIFxQsM0
P「たとえば昨日、お前が高峯と会うことがなかったとしても、いつかはこのことに直面していたかもしれないんだ」
P「そう考えると、彼女自身がアイドルというものをいま一度考える良い機会になったと思う」
そう言うと、卯月はまだなにかを言いたげな顔をしながらも、頷いてくれた。
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