過去ログ - まゆ「夜は、忙しい」
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6: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:47:58.20 ID:uE9Ah2ja0
「そんなワケで、各自、自分で思いつく自分の欠点を書いてきて欲しい。内容が内容だけに強制はしないが、協力してくれると提案した俺としては嬉しい」

彼がそう締めくくると、私の周りの人達は散り散りに去って行った。

ある人は、仕事があるからとそそくさと事務所から出ていき、ある人は、せっかく集まったのだからとオフのアイドルを誘って街へ出かける話をしている。
以下略



7: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:48:45.41 ID:uE9Ah2ja0
「自分の欠点を纏めて……それを、プロデューサーさんに提出するんですよね……?」

「そうだな。そんで俺から見て、その通りだと思ったところや、そうじゃないと思ったところにコメントを書いて返す。なんか先生みたいだな」

「それは……どれだけ書いても、ですかぁ?」
以下略



8: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:49:41.27 ID:uE9Ah2ja0
次の仕事現場では、少し表情が硬いと注意された。

その次のテレビ番組では、上手く喋れなくて、何回かNGをもらってしまった。

移動中の車の中でも、マネージャーさんから体調が悪いの?と心配されてしまった。
以下略



9: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:50:43.40 ID:uE9Ah2ja0
ノートの表紙に赤いペンで書き記し、まだ何も描かれていない真っ白なページを開いた。

開いたページの左上から、ボールペンで、汚していくように今日のミスを文章にして空白を塗りつぶしていく。

後でプロデューサーさんがコメントを残しやすいように、一行書いたら一行空白にして。
以下略



10: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:51:45.54 ID:uE9Ah2ja0
「プロデューサーさん。よろしくお願いします」

翌日。目の下にほんの少しの違和感を覚えながらも、事務所に向かった私はいの一番でノートをあの人に差し出した。

彼は驚いた表情をして、ノートを手に取るとペラペラとめくり始めた。
以下略



11: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:52:29.52 ID:uE9Ah2ja0
「まゆちゃん、今日は大丈夫なの?」

仕事先に移動中、マネージャーさんがバックミラー越しに話しかけてくる。

たぶん、昨日私の調子が悪かったのをまだ心配してくれているのだろう。
以下略



12: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:53:18.87 ID:uE9Ah2ja0
「まゆ!」

雑誌の写真撮影の仕事を終えると、あの人が駆け寄ってきた。

手には、今朝私が渡した大学ノート。
以下略



13: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:53:56.23 ID:uE9Ah2ja0
「……明日も」

「ん?」

「もし、また明日も、その次の日も、またその次の日も」
以下略



14: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:54:38.09 ID:uE9Ah2ja0
家に帰って、手を洗う前に、うがいの前に、夕食の前に、ノートを急いで開く。

真面目に書いていた最初のページではなく、真ん中のあたりを開いてしまったせいで、今思えばどうでもいい文章が目に入ってきた。

だけど、そんなどうでもいい文章の下に、ところどころ赤いペンでコメントが入っていて。
以下略



15: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:55:22.11 ID:uE9Ah2ja0
その前のページ、前の前のページにも、赤いペンでコメントが入っていて、

自分がナイフで抉った傷口を、彼が優しく看病してくれているような錯覚に陥る。

それがまた快感となって、そして私のために使ってくれた時間に比例して、汚い独占欲に変わっていく。
以下略



16: ◆Zo89VSw555MV
2016/03/26(土) 00:56:32.24 ID:uE9Ah2ja0
「まゆさん!」

事務所に入って突然かけられた、少し怒ったような声に、体がびくりと反応してしまう。

声の主を探してみると、幸子ちゃんが腕を組んで立っていた。
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