過去ログ - 【モバマスSS】香水 あるプロデューサーの物語
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38:名無しNIPPER[saga]
2016/03/29(火) 22:07:38.14 ID:stipOQWj0
 低性能の音響、貧弱な照明。アイドルの活躍の場としては、どこか物足りないステージだった。しかし今、加蓮の歌声は、百人足らずの観客を魅了している。
 加蓮のデビュー曲は、哀切なバラードである。アイドルらしい華やかさはないが、聞く者の心を惻々と打つ歌だ。


 神様がくれた 時間は零れる あとどれくらいかな


 加蓮の歌を聞いていると、心の中に何かが揺蕩う。それはこの歌詞のせいなのか、加蓮の歌唱力のなせる業か、判然としない。
 ライブが始まる前、会場にはある種の熱気が立ち上っていた。今度デビューするアイドルは、どんな娘なのだろうかと期待するような熱気。
 しかし今、この場にいる全員が静かに聞き入っている。まるで、一人ひとりが孤愁しているかのように。



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