過去ログ - 今井加奈「二つ目の魔法」
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5: ◆bwwrQCbtp.[sage]
2016/04/07(木) 19:43:13.48 ID:hs8LFNrfO

 オーディション後、家に帰ろうとして、加奈は気付いた。

 今日は、わたしが実力を出し切れずに負けた。
 わたし自身のせいで負けた。
 それなのに、プロデューサーにちゃんと謝っていない。

 ちゃんと謝りたかった。
 そしていつものように、今日はどうすれば良かったのか、アドバイスを聞き
たかった。
 そうすれば、またいつもの元気な加奈に戻れる気がした。
 加奈は事務所に向かった。

 事務所の電気は点いていた。
「こんばんは」
 言いながらドアを開ける。

 事務所の中には、誰もいなかった。
 電気が点いてるのだから、プロデューサーも帰ったわけではないだろう。
 トイレかなにかかな。

 加奈はプロデューサーの帰りを待つことにした。
 いつもの、プロデューサーの隣の空いた机に向かう。

 加奈はこの席が好きだった。
 この席に座って、プロデューサーの話を聞くのが好きだった。
 プロデューサーは、いつも親切にいろいろ教えてくれる。
 加奈の疑問に答えてくれる。
 その話を、時にメモを取りながら聞いている時間が好きだった。

 プロデューサーの隣の机に、荷物を下ろす。
 椅子を引き出して、座ろうとした、その時。

 プロデューサーの机の上に、無造作に置かれた書類が目に入った。

 見るつもりはなかった。
 が、視線が落ちた瞬間、文字が目に飛び込む。


【社外秘】【関係者限】
・ソロデビュー基本要件
1.査定期間内に2回以上オーディションに合格すること
2.査定期間内にそれ以外の特筆すべき実績のあること


 その下に、加奈のオーディション日程が列記されている。
 受かったオーディションには⚪︎が、落ちたオーディションには×がついていた。
 ⚪︎がついているのは最初の1つ、もう数ヶ月前のものだ。
 それ以降は全て×。今日受けたものもである。
 その下に、2.として「青春劇場主演」と書かれていた。

 受かったオーディションと、青春劇場のミュージカルで主演したのは、ほぼ
同じ時期だ。
 そして、書き並べられているオーディションで、まだ残っているのはあと一つ。
 次のオーディションまでが、査定期間と言われる期間の区切りということ
なのだろうか。

 つい、書類を手に取る。
 その瞬間、入り口のドアが開いた。






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