過去ログ - モバP「二兎追い人の栞」
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146: ◆m03zzdT6fs[saga]
2016/05/11(水) 04:45:42.03 ID:B4TJufEpo
『待ってください、文香さん。僕が、僕が夢を追って……文香さんに相応しい男になるまで。三年……いや、二年で成し遂げて見せます。必ず文香さんに釣り合ってみせます。だから――』

「……」

『待っていてはくれないでしょうか……っ』

 僕は頭を下げる。――だってそうだ、事実上これは文香さんの好意を断っているに等しいのだから。

 でも今更、変えることはできない。僕はやりたいように生きてきた。それが染みついてしまっている。だから、夢を追う。物語を創り上げるという夢を。

 もちろん文香さんも追う。文香さんに相応しい男になれるように。でもその一歩が、夢を追うことから始まると僕は思っているから。

 ……それから、少しの時間が流れる。僕は頭を下げたまま文香さんの言葉を待った。けれど文香さんは何も返してはくれない。

 やはり許してはくれないのだろう。そう思い始めた時だった。

「……人は、驚き、嬉しいときに、言葉を失うものなのですね、Pさん」

『……え?』

「……頭をあげてください、Pさん」

 僕は文香さんの言葉に従うように、ゆっくりと頭をあげる。そして彼女の顔を見た。

 文香さんは笑っていた。何もかも包み込むような優しい笑みで。僕にはもったいないほどの、満面の笑みで。

 ――ああ、社長がぴんと来るのも分かる。だって、こんなにも美しい。アイドル、偶像という称号がこれほど似合う人なんて、数限りがある。

 僕が、放心したように文香さんを見つめていると、文香さんは立ち上がった。そしてカウンター越しに僕の手を取って。



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